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2018年05月18日06:54

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book『ヴァイマル憲法とヒトラー』(池田浩士)

池田浩士著『ヴァイマル憲法とヒトラー/戦後民主主義とファシズム』(岩波現代全書)を『(増補新版)抵抗者たち/反ナチス運動の記録』に引き続き読んだ。この本は3年前に池田さんを招いた連続講座を聞いた時期に買ったもので、その講座の記録はパンフレットになっている。(グループZAZA発行「天皇ってなに?『日の丸』『君が代』って?」「ファシズムとボランティア〜自発性から総動員へ〜」)第一次世界大戦後のヴァイマル憲法下で、ヒトラーが人心を掌握し、合法的に政権を獲得し、ユダヤ人絶滅政策と戦争への道へ突き進んでいく過程を詳細に追った実に興味深い本だった。またドイツ国民を魅了したナチズムの本質を掘り下げ、現在の私たちが遭遇している新たなファシズムへの対峙の方向を示す。その内容は以下の通りである。

1)もう一つの戦後民主主義とドイツのファッシズム
2)ドイツの敗戦、もっとも民主的な憲法
3)戦争する国をボランティアが担う
4)死と政治
5)遙かな国の遠い昔ではなく

最終章の「遙かな国の遠い昔でなく」でカフカに触れた箇所に心が引かれた。カフカはベーメン(ボヘミア)のプラーグ(プラハ)で生まれ、ヒトラーより6歳年長の戦中派だった。1924年に結核で死んだカフカは、後にナチスドイツによってベーメンが占領されたことも、プラハの北方にあるテレージェンシュタット全市がユダヤ人ゲットーとされたことも、彼の恋人だったミレナ・イェセンスカーがベルリン北方の強制収容所でなくなったことも知らなかった。彼が最も愛した末の妹、オットラはアウシュビッツに移送された子どもたちの付き添いを志願し、アウシュビッツで死んだことも。「どんどん先に走り続けて、とうとう遙か彼方の左右に壁が見えたときには、とても幸せな気持だった。でも、この長い壁が急速に両側から迫ってきて、私はもうこのどんづまりの部屋にいる・・・」というカフカの遺稿に描かれた走りつづけるネズミの寓話は私たちの現在の姿を暗示していると思った。まだ行けていないチェコのプラハとポーランドのアウシュビッツにぜひとも行きたいと思った。また同じ最終章で戦後のドイツとナチズムのとの関係を問うた映画群(「ブリキの太鼓」「戦場のピアニスト」「シャトーブリアンからの手紙」「ハンナ・アーレント」「愛を読むひと」)はすべて見ていたので、現在の私たちの立ち位置がどこにあるのかが心に迫って分かった。
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