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2017年07月02日16:31

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book『戦艦武蔵』(一ノ瀬俊也)

一ノ瀬俊也著『戦艦武蔵/忘れられた巨艦の航跡』(中公新書)を読んだ。一昨年、戦艦武蔵がフィリピン海底で発見された。当時武蔵が撃沈された状況を分析したNHK特集が放映され、著者も出席され、コメントされていた。戦艦武蔵は1942年に完成し、44年のレイテ沖海戦で撃沈された戦艦で、戦艦大和と同型の大型戦艦だ。この本は建造から沈没までの奇跡を追い、戦後日本社会の中で戦艦武蔵がどのように記憶され、語られてきたかを、戦艦大和のそれと比較して、浮き彫りにする。著者は「序章」で「日本海軍の巨大戦艦・武蔵とそれにまつわる物語は我々に何を教えるか」「武蔵の知名度が相対的に低い理由を、戦中の武蔵の短い生涯や、戦後に編まれた武蔵物語の七〇年にわたる歴史をたどることによって明らかにしてみたい」とされる。私は後半の展開(「戦後の武蔵物語とその特徴」の「武蔵と日本人そして、天皇/吉村昭と渡辺清」「語り出す武蔵乗務員たち」「二〇一五年の武蔵」)が大変興味深かった。個人的には以前渡辺清の本を集中的に読んだことがあり、また大岡昇平の著作、とりわけ『レイテ戦記』も集中して読んだことがあったことから、この本の後半の叙述に引きこまれていった。この本は武蔵乗務員の戦後の軌跡を追い、その戦後史と天皇制の問題、現在にいたってのその忘却を思想的・歴史的文脈で深く解明している。「あとがき」で著者が『戦艦武蔵講義』(人文書院)を書かれていることを知り、取り寄せて読んで見ようと思った。いずれも埼玉大学教養部の講義からこれらの本ができたとのことで、この話を若い世代の学生が聞いているのはすばらしいと思った。
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