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2017年05月23日11:05

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book『『群島と大学』(石原俊)

石原俊著『群島と大学/冷戦ガラパゴスを超えて』(共和国)読んだ。著者は歴史社会学者で、「その狭い意味でのフィールドは、北西太平洋に浮かぶ小さな島々である小笠原諸島や硫黄列島と、そこから離散した人々の住む場所です。」「グローバリゼーションと植民地主義の前線・底辺に置かれてきた群島の側から、あるいは海洋世界を拠点に生きる移動民の眼から、環/間太平洋世界の二〇〇年の近代を捉え直し、また日本や米国のあり方を裏側から問い直す作業である。」(「はじめに」)とあるように、この本の中心は「群島という現場/帝国・総力戦・冷戦の底辺から」である。この章は読者をぐいぐいと引きつけてやまない。前著の『<群島>の歴史社会学/小笠原諸島・硫黄島、日本・アメリカ、そして太平洋世界』(弘文堂)とあわせて読まれるとよい。著者の取り組んできたもうひとつの領域は、「日本の社会の歴史的現在を、ポストコロニアル状況やポスト冷戦状況といった裏側の視点から捉えようとする同時代分析です。」(「はじめに」)それはこの本で、「同時代史という現場/歴史の岐路としての現代日本」とその別な展開である「大学という現場/グローバリゼーションと国家主義の攻囲のなかで」で提示される。大学の現状に関して言えば、私が大学に入った1962年が戦後初めて大学管理法案が上程された年で(この時期は同時にキューバ危機の年でもあった)、その反対運動のなかで私は政治的覚醒を得た。その時期から遠く離れ、国家主義とグローバリゼーションによる大学の酷薄な変質、様変わりした現実を知り、大変驚かされた。また著者が権力の攻撃に対して、研究者と学生による「知的営為」を共同で守り育てていこうとされる強い意思に感銘を受けた。また最後の書評群にも知的刺激を受けた。著者の大部な『近代日本と小笠原諸島/移動民の島々と帝国』(平凡社)はまだ読めていないが、いずれ読みたいと思った。
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