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2017年04月25日20:45

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book『「働く青年」と教養の戦後史』(福間良昭)

福間良昭著『働く青年」と教養の戦後史/「人生雑誌」と読者のゆくえ』(筑摩書房)を読んだ。1950年代後半から60年代初頭にかけて『芦』『人生手帖』『青春手帖』等の人生雑誌(創刊は50年代初め)が興隆を極めた。その主たる読者は高校進学を絶たれた勤労青年(集団就職世代)で、鬱屈した心情と強い向学心を持って、古今東西の哲学者・文学者の名前や著作がちりばめられたこれらの雑誌を熟読した。また読者の交流がはかられた。高度経済成長の終わりの70年代半ばで人生雑誌は終焉するが、この本はその戦後史を辿ることにより大衆的教養主義の盛衰を描いたものだ。この話が私にとって興味深かったのは、ここで取り上げられる「教養主義」(大学進学世代の教養主義と勤労青年の大衆的教養主義)はなにか「既視感」を覚えるものだったからである。私の高校入学は1959年、大学入学は1962年で、家は零細な農家だった。高度経済成長初めの宅地化で農地が売れたことにより進学が可能になった世代である。時代は教養主義文化の残滓があった。私が高校3年生で読んでいた河合栄治郎、山下肇(『学生への手紙』は人生雑誌発行元の青春出版社)、本多顕彰、塩尻公明の本が今も私の本棚に残っている。また私が5年ほど年齢が上なら高度成長前になり高校進学はできなかっただろうと想像すると「働く青年」の教養主義は私のものだったかも知れないと思うからだ。ということでこの本は大変おもしろく、ぐいぐいとその世界に引きこまれた。
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