book『ルポ・トランプ王国』（金成隆一)

金成隆一著『ルポ・トランプ王国／もう一つのアメリカを行く』（岩波文庫）を読んだ。朝日新聞のニューヨーク特派員である著者が昨年のアメリカ大統領選挙期間中に五大湖周辺の５州の通称「ラストベルト」（さびついた工業地帯）を中心に、なぜこの地帯の人々がトランプ支持に動いたのかをルポした大変興味深い本だった。著者は「トランプではなく、問題だらけのトランプを支持してしまう現代アメリカに興味があった。」（「おわりに」）という。著者がラストベルトの労働者や住民と１年間とことんつきあい、人々の置かれた現実とその思いを浮き彫りした点にこの本のおもしろさがある。最後の方では、民主党候補のサンダース支持者のインタビューも加え、共和党のトランプ支持者との共通した基盤を明らかにする。「グローバル化と技術革新が同時に進む世界で、先進国に生きるミドルクラス。そう捉えた時、いろんなものが陸続きに見えるようになった。」（「あとがき」）私たちもすでにハシモト、アベという「前トランプ」現象を経験した、あるい経験中であるので、大変示唆に富むドキュメンタリーだった。