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2017年02月07日06:50

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book『手塚治虫と戦災孤児』(菅富士夫)

菅富士夫著「手塚治虫と戦災孤児」(中井書店)を読んだ。大阪に於ける戦災孤児関係の本で、手塚治虫と空襲・戦争体験及び戦災孤児への関心・作品への反映を検討した本だった。大阪における戦災孤児については「大阪における敗戦後の浮浪児・孤児と全国孤児調査」(第2章)で詳しく検討されていて、興味深かった。この章の裏扉には、「アポリア」(難問)という言葉が辞典より引用されており、戦災孤児についての解けない難問があることが提示されている。戦災孤児・浮浪児などの定義と呼称について、戦災孤児の実数について、男女比のアンバランスの原因、全国孤児実態調査の意義と限界等詳しく批判的検討される。戦災孤児について知りたいと思ったことが一定この本で見えてきた。それは1950年代に戦争孤児を取り巻く環境が大きく変化したことである。1948年に児童福祉法が施行され、一般の児童福祉施策のなかに浮浪児・孤児への対応が解消されたこと、1950年以降に孤児たちは青年に達し、生業を得て、街頭から姿を消したこと、経済復興とともに浮浪児・孤児への関心が喪失したこと等の変化がそれだ。ということは、私が1958年当時に天王寺公園で見かけた「靴磨きの少年たち」は「戦災孤児」でないことになる。この本でこれが確認できたことだ。とすれば、あの少年たちはだれか?考えられるのは、釜ヶ先が近接するのでスラムとの関係、被差別部落あるいは在日朝鮮人との関係、ひいては戦後の都市の貧困の問題ではないかと想像される。だれかこの時期のことに詳しい方はおられないかと思った。また手塚治虫と空襲体験と作品への反映については「手塚治虫の戦争と空襲」(第1章)、手塚の孤児への関心・作品分析については「手塚治虫と戦災孤児たち」(第3章)に詳しく展開される。私は手塚の講談社版「漫画全集」を持っていいるので、読み直してみようと思った。引く続き東京、沖縄における戦災孤児関係の本を読んでいくつもりだ。
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