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2016年10月01日14:15

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book『シチリアの春/世紀末の文化と社会』(竹山博英)

引き続き竹山博英の著者『シチリアの春/世紀末の文化と社会』(朝日選書)を読んだ。この本は2部4編からなっている。第1部はシチリア北東部のリパリ島の考古学遺跡(ギリシア時代)で発掘したギリシア悲劇・喜劇の仮面のミニチュアの話から映画監督タヴィアーニ兄弟の映画「カオス」とつながり(「風の神の島」)、それは映画「カオス」とその原作者のシチリアの小説家ルイージ・ビランデッロの小説との差異の分析と進み、原作者の抱えた近代の「孤独」と農民に視点をすえたタヴィアーニ兄弟の映画の独創性を明らかにする。(「月とカオス」)第2部はリソルジメント(イタリア統一)時期を挟んでシチリアの勃興期ブルジョアジーであるフローリオ家の繁栄とパレルモ各地に残るアール・ヌーヴォー建築や絵画の詳しい展開、さらに北部資本の収奪によってシチリア経済が崩壊し、フローリオ家の没落するまでを描く。(「世紀末の夢の跡」)今回のシチリア旅行ではパレルモのアール・ヌーヴォー建築・美術をあまり意識しなかったので、残念なことをした。最後に明治期のパレルモに移住した日本人女性画家、ラグーサ・玉の軌跡を追う。(「パレルモのラグーサ・玉」)この本でシチリアの近代の姿が実に鮮やかに理解できて、大変おもしろかった。
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