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2015年09月19日20:02

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book『満映とわたし』(岸富美子・石井妙子)

岸富美子・石井妙子著『満映とわたし』(文藝春秋社)を読んだ。満州事変後に満州国が作られ、その地で国策映画会社・満州映画協会「満映」が誕生した。関東大震災時に大杉栄と伊籐野枝と大杉の甥を虐殺した甘粕正彦が君臨し、李香蘭が女優として花開いた満映に日本から多くの映画人が渡ったが、そのなかに19歳の映画編集者岸富美子がいた。彼女が満映で映画編集者として自己形成していく過程とさまざまな映画人との交流(私が大変興味を持ったのは映画監督内田叶夢・木村荘十二など)、そして日本の敗戦とその後の苦難、解放後の中国に残り中国映画の制作、中国映画人へ映画技術を伝えたこと、そして日本への帰国、戦後の日本社会での苦難等実に心を打つ内容だった。岸富美子は現在95歳。彼女の聞き取りをした石井妙子は46歳の若いノンフィクション作家。「本書は満映の崩壊を見届け、敗戦後、中国映画の創生期にかかわった当事者による最初で最後の膨大な証言録であり、今後、貴重な第一次資料となることだろう。とはいえ、満州の裏面史、映画史として読まれるよりも、国家という大きなものが崩壊していく中で、精一杯に生きた女性の波瀾に富んだ生涯の記録として捉えられるべきものと考えている。」(石井妙子「あとがき」)

<目次>
序 章 出会い
第1章 映画界に引き寄せられた兄たち
第2章 第一映画社?伊藤大輔と溝口健二
第3章 『新しき土』と女性編集者アリスさん
第4章 満映入社、中国へ
第5章 甘粕理事長と満映の日々
第6章 玉砕直前の結婚式
第7章 甘粕自決、ソ連軍侵攻
第8章 国共内戦の最中、鶴崗へ
第9章 「学習会」と「精簡」
第10章 映画人、炭鉱で働く
第11章 北朝鮮からの誘い
第12章 国民的映画『白毛女』
第13章 日中の狭間で育てた弟子たち
第14章 十四年ぶりの祖国へ
終 章 日中満映社員たちの戦後
あとがき
主要参考文献一覧
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