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2015年09月13日06:21

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book『安倍首相の「歴史観」を問う』(保阪正康)

保阪正康著『安倍首相の「歴史観」を問う』(講談社)を読んだ。昭和史の実証的研究の蓄積をもとに集団的自衛権の閣議決定による容認、安保法制の強行と突き進む安倍首相の諸施策は、太平洋戦争で日本を破局に陥れたかっての軍事指導者と酷似していると批判し(「軍服を着た首相」との痛烈な批判)、戦争と統制に進む現政権と日本社会にはびこる歴史修正主義を根底から批判する。その内容は著者が安倍首相の言辞に不安を抱き、その危機観を述べた講演を収めたもの、月刊誌などに発表したジャーナリズム論、昭和史を見つめる目を語った毎日新聞連載の「昭和史のかたち」、著者は朝日新聞の慰安婦問題に関する第三者委員会の委員として検証に関わったが、その慰安婦問題の書き下ろしからなり、実に興味深い本だった。特に慰安婦問題を「軍隊と性」という視点から再考し、「慰安所の設立とその内実は、部隊長と主計将校と軍医のトライアングルの中に見事に隠蔽されている。」とする論考は教えられることの多いものだった。その最後の締めくくりの言葉は示唆に富む。「私自身は、今回の朝日報道の検証にあたって、その報道の内実、その報道のプロセスを丹念に辿ることにで二点の教訓を再認識したわけだが、その<冷めた目で史実と向き合う>と<史実を自らの信条の道具に使わない>というこの二点は単に慰安婦報道にのみについて言えることではなく、歴史的事実そのものを検証するときの基本姿勢であると断じてもいい。」著者は『昭和天皇実録 その表と裏1、2』(毎日新聞社)を書かれているとのことだが、ぜひ読んで見たいと思った。「昭和天皇実録」については半藤利一著『「昭和天皇実録」に見る開戦と終戦』(岩波ブックレット)が最近出た。

<目次>
軍服を着た首相/まえがきに代えて
第1章 謙虚に史実と向き合うということ/戦後七十年と安倍政権の歴史観
第2章 戦後民主主義の崩壊の中で/「戦時体制」にどう抗うべきか
第3章 昭和史のかたち/歴史の教訓から現在を解読する
第4章 慰安婦問題試論/「軍隊と性」をめぐる歴史的検証について
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