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2015年09月03日18:31

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book『センセイは見た!「教育改革」の正体』(岡崎勝)

岡崎勝著『センセイは見た!「教育改革」の正体』(青土社)を読んだ。私は公立小学校教員と中学校教員の経験があり、小学校の現場からの「教育改革」批判については名古屋の岡崎さん、中学校のそれについては横浜の赤田圭亮さんの書かれるものを「指標」としてきた。今回の岡崎さんの本は、2008年から雑誌「現代思想」に書いてこられた文章8本にコラム10本を付け加えてまとめられたものだ。2008年〜2015年までに「改革」の美名のもとに上からもたらされ施策の結果は「混乱」と「現場無視」だった。それへの批判が、「現場」的発想と研ぎすまされた「論理」によってなされる。「教育改革が常に『現場の声』や『現場のリアルな実態』を無視するという、『新自由主義』特有ののやり方ですすめられたことを、批判的に書きました。自分で自分の本はすごいぞ!と言いにくいのですが、とりあえず、十年以上、よく書き続けられたなという、書くことは体力と忍耐だということを示した本になりました。」(岡崎さんの本の「送り状」から)論じられている内容は、学力テスト、新学習指導要領、教員・学校評価制度、いじめ問題、教員の疲弊と教員労働論、子ども・親・教員論、学校論、道徳教育等と多岐にわたるが、実に読み応えのある、すごい!本だった。本書のなかで特に私が心ひかれた内容をひとつのみ上げるとすれば、次の箇所である。「親との話し合い(交渉)から逃げることができないのは、ひとえに子どもを学校が預かっているからである。この『預かる』という言い方は、非常に微妙な言い方だが、当を得た表現だと思う。親は、子どもを日中、学校に預けて安心して仕事ができる。(中略)ざっくりと言ってしまえば、大人の日中の自由を保障するために子どもを預かるのが学校というところである。それを私は『学校託児所論』と言ってきた。安心して子どもを税金で預けられる場所はそうそうない。日本で学校以外にない。」(「貧しさに負けた・・いえ、世間・格差に負けた・・!」)この学校論は現在の「学校」の存在を考えるとき、大変重要な考えだと思い、同感である。そこから導かれる岡崎さんの子ども論・親論・教員労働論は実に深いと思う。教育に関心あるみなさんにこの本が読まれることを願う本だ。

<目次>
1 眠れない夜と教育改革の日には、忘れかけてた「愛国心」がよみがえる(2007年)教育基本法「改正」、学力「低下」、学校評価・教員評価
2 センセイは見た!(二〇〇八年)学力テスト、教員の疲弊、学校の中の競争原理
3 静かにしてセンセイの話を聞きなさい!(2009九年)いまどきの子ども、モンスターペアレント(?)、新学習指導要領
4 センセー「子ども手当」は、子どもがつかっちゃいけないの?(二〇一〇年)民主党政権の「教育改革」、子どもや親の不安、学校とは何か
5 センセー、もう話し合うのをやめて、多数決で決めて下さい!(2012年その1)橋下市長の「教育改革」、教員のサービス労働、公立学校の役割
6 いじめ問題における現場感覚(2012年その2)いじめの定義、子ども・親・教員、文部科学省・教育委員会
7 「俺のとは違うなぁ」(2014年)「アベ暴走教育改革」、道徳の教科化、男の子と女の子
8 「貧しさに負けた…いえ、世間・格差に負けた…?」(2015年)早期教育・中学入試、子どもたちの「貧困」、「二分の一成人式」
いまどきの学校メモ(10編)
おわりに


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