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2015年08月10日23:33

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壁は越えられなかった 『日本のいちばん長い日』(リメイク版)

岡本喜八監督の傑作映画の2度目の映画化(リメイク)となる、『日本のいちばん長い日』を見て来ました。半藤一利の原作を映画化したものです。

上映時間2時間半、松竹映画久々の大作です。


【物語】
昭和20(1945)年4月。
戦局が悪化の一途をたどる中、昭和天皇(本木雅弘)の信任の厚かった鈴木貫太郎(山崎努)が内閣総理大臣に就任。終戦に向けての政治工作が密かに進められるが、内閣では、東条英機前総理などの強硬派が依然として力を持っており、明確な結論が出せない日々が続いていた。
やがて沖縄上陸戦、東京大空襲などで追い詰められた日本政府に、連合国側からポツダム宣言が付きつけられる。宣言の受諾の条件としての、国体の護持を巡り、阿南陸軍大臣(役所広司)は鈴木首相と対立。ついに広島・長崎への原爆投下を経て、昭和天皇の聖断が下されるが…。


…『クライマーズ・ハイ』で、新聞社のオフィスを舞台に白熱した男たちのバトルを描ききった原田眞人だけに、この題材は大いに期待するところでした。実際、8月14日から15日にかけての、玉音盤を巡る攻防戦や、激しく対立する閣僚たちの駆け引きには見どころがありますが、ここにきてどうしても”超えられない壁”が立ちはだかってしまいます。

それは、同じ原作を先に映画化した岡本喜八版(1967年東宝映画)の存在です。
モノクロの画面からフィルムを通り越してたぎるような熱気、汗、吹き出す血の迫力は、まさに岡本喜八監督の真骨頂。どう控えめに見ても、見比べてしまうのが人情というもので、駄目と分かってはいても比較論にならざるを得ないハードルの高さは、如何ともし難いものでした。

結果として、今回のリメイク版は、健闘はしているものの、8月14日に至るまでの前ふりが長く、焦点がややボヤけてしまったのが残念というのが正直なところです。

ただし、岡本版ではほとんど顔も見えなかった昭和天皇が、今回は意志を持った人物としてしっかりと描かれ、その声まで似せて見せた本木雅弘の演技は大したものです。

参考に、新旧両作品の主な配役も比較してみます。岡本版/原田版の順です。

・鈴木貫太郎総理大臣(笠智衆/山崎努)
・阿南陸軍大臣(三船敏郎/役所広司)
・米内海軍大臣(山村聰/中村育二)
・迫水内閣書記官長(加藤武/堤真一)
・畑中少佐(黒沢年男/松坂桃李)
・森近衛師団長(島田正吾/高橋耕次郎)
・佐々木大尉(横浜警備隊長、天本英世/松山ケンイチ)
・下村情報局総裁(志村喬/久保酎吉)
・昭和天皇(松本幸四郎/本木雅弘)

史実をどう描いているかはともかくとして、1本の大作映画として、大いに見る価値はあります。

★★★。
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