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2015年05月25日21:04

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book『ぼくらの民主主義なんだぜ』(高橋源一郎)

高橋源一郎著『ぼくらの民主主義なんだぜ』(朝日新書)を読んだ。この本は東日本大震災直後から朝日新聞に月1回連載が続いてきた「論壇時評」の4年分をまとめたものだ。私は高橋さんの「論壇時評」を愛読してきたが、こうしてまとめて読むと、震災直後に変わると見えた日本社会がもとの木阿弥にもどり、さらに悪くなっていることをあらためて痛感させられた。実は先日高橋さんの講演会を私の地元で行い、私が駅まで高橋さんをお迎えに行き、会場までご一緒した。途中、私が高橋さんの本になぜ惹かれるかをお話しした。私の父が戦死していて、そのことを引きずって生きてきたこと、私の生きてきた過程が戦後史とほぼ重なり、高橋さんのお書きになるものに引き寄せられてきた(特に最近の本『「あの戦争」からこの戦争」へ』)と。そして講演が始まった。冒頭、高橋さんの御家族のお墓の話から始まり、伯父がふたりおられ、アッツ島とルソン島で戦死したと聞いていたが、その後、戦死の状況を調べたら、アッツ島と聞いていた伯父の戦死の場所が旧ソ連のカザフスタンだと判明したとのお話しだった。また、今夏、もうひとりの伯父の戦没地、ルソン島を訪ねられるとのことだが、「論壇時評」等でその報告が読みたいと思った。私も父の戦死した場所を台湾の膨湖島と40歳代になるまで間違って認識していた。ずっとそう思っていたので、台湾映画(たとえば侯孝賢の映画)を見ては「父がここで亡くなったのだ」と思って涙したものだ。おかげて台湾映画がとっても好きになたったのだが。ところが日本の侵略の歴史を訪ねる台湾の旅にはじめて行く前に母の所持していた父の遺品(信玄袋に入っていた。)を確認したら間違っていたのだ。本当は「中国湖北省顎城県梁湖島」だった。中国の旧名「中華民国」を中学校時代のなぜか台湾と勘違いしたようだ。まだ中国の戦没地を訪ねていないが、死ぬまでに一度は訪ねたいと思っている。思い違い、思い込み、忘却・・頼りない人間の記憶に抗して、私も「戦争の記憶」の想起の作業を続けて行きたいと思った。個人的な感想を書いてしまったが、この本は熟読する価値が大いにあると思う。
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