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2015年04月16日08:44

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book『めだかの列島』(今井美沙子)

今井美沙子著『めだかの列島』(筑摩書房)を読んだ。先に読んだ『家族のスケッチ』が昭和30年代(1950年代後半、高度経済成長前の時代)の長崎県五島福栄に生きる父母と子どもたち(著者の家族)を描いた児童文学で、『メダカの列島』はその時代の五島福江を綴った記録文学である。この本は著者のデビュー作で、そこに綴られた姿がこどもの世界に移しかえられて『家族のスケッチ』となった。どちらも故郷の当時の生活に対する著者の熱い思いが書きこまれていて、深い感動を覚えた。この本の帯には鶴見俊輔さんが「『めだかの列島』は大都会でくらすひとりの主婦が、自分の日常とのちがいをいとぐちとして、故郷にあった別のくらしかたをほりおこした記録である。その筆のはこびの背後に、うまれ故郷と今の生活の拠点とのたえざる交錯があり、そこにとびちる火花が、文体を活気あるものにしている。」と書いている。また、著者は「あとがき」で「昭和三十年当時、彼等は必死に生きていました。地をはうようにしながらも、それでも一抹の光を求めて肩を寄せ合って暮らしてきました。五島に限らず、あの町でもこの村でも、みんなみんな肩を寄せ合って生きてきました。私は人間の小さな営みにスポットを当てて、これからもずっと私なりに綴っていきたいと思います。中央の歴史ではなく、忘れられた田舎の片すみの人間のたちの営みを、もう一度、はっきり目を開いて、しっかり見つめていきたいと思います。」と書いている。よい本に出会えるとはうれしいものである。今井さんの書かれてきた本をこれ以外も読んでみたいと思った。
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