岩明均のベストセラー漫画(1988〜1995)を映画化した『寄生獣』を見てきました。
物議を醸した『永遠の0』を撮ったかと思えば、『STAND BY ME ドラえもん』が大ヒットしたばかりの、特撮マン出身者ではいちばんの出世監督・山崎貴の最新作です。
来年4月25日公開の完結編と共に、2部作の構成です。
【物語】
犯人不詳の惨殺死体が全国各地で発見され、行方不明者も続発。実は、正体不明の寄生生物が人間の体をのっとり、他の人間を捕食していたのだった。
平凡な高校生の泉新一(染谷将太)は、ある夜突然、寄生生物に襲われるが、脳を乗っ取ることに失敗した生物(阿部サダヲ)は新一の右手に宿り、自らを”ミギー”と名乗り、2人は奇妙な共同生活を始める。
しかし、一般市民の中に紛れ込んだ生物は、新一とミギーを新たな脅威と考え、新一の高校に監視役として化学教師の田宮良子(深津絵里)を送り込む。
ついに新一の母親までもが寄生生物に殺され、新一は戦う決心をする。
…他の生命体に人体を乗っ取られるSF映画は数多く、ちょっと思い出しただけでも『遊星からの(よりの)物体X』『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』『スペース・インベーダー』『光る眼』『インベージョン』などなど、原作連載以前から普遍的なテーマでした。
面白いのは、舞台となるのはアメリカの辺境の地でも南極でもなく、ごく普通の日本の都市で、主人公も高校生であるという点。一夜にして、日常が非日常に転じるという構図は日本のアニメーションでも良く見られるものですが、この原作はそれらのハシリであると言えそうです(未読ですが)。
寄生した生物と主人公との間で共存関係が生まれ、共闘するという所がもっとも面白い点でした。しかしこの点は原作によるところが大きく、映画として見ると、同監督のかつてのSF路線…『ジュブナイル』や『リターナー』に回帰しただけのようで、『ALWAYS』3部作のようなノスタルジー路線ではないだけ良かった…という程度に留まります。
しかし、前作で「ドラえもん」を撮った監督とは思えないほど残酷描写はキツく、内蔵も血しぶきもてんこ盛りで、さらには高校生の大惨殺シーンもあり、主人公とミギーが見せるわずかなユーモアは、申し訳程度に添えられているだけです。不思議なことに痛みを感じるような描写はなく、あえて無味乾燥に残虐シーンを描いているようでもありました。
続編があるので思わせぶりに終わるため、1本の映画としての完成度は極めて低いですが、どこか不思議と記憶に残るのは、残酷描写とユーモアとのアンバランスによるためでしょう。
★★★。本当は続編と合わせて評価したい作品でした。
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