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2020年01月15日18:12

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book『一粒の麦死して/弁護士・森長英三郎の「大逆事件」』(田中伸尚)

田中伸尚著『一粒の麦死して/弁護士・森長英三郎の「大逆事件」』(岩波書店)を読み終わった。幸徳秋水、管野須賀子ら12名が処刑さた(被害者総数は26人)近代日本最大の国家権力犯罪「大逆事件」の再審請求の主任弁護士であった森長英三郎の評伝である。再審請求に全エネルギーを投入し、死者たち・被害者たちの記録、近現代史の書き換えに心血を注いだ森長の生き様を描いたドキュメントだ。「森長はしかし再審請求が最高裁で棄却になっても、「大逆事件」のメインステージから退場せずに、自ら表現という舞台を作って語り通した。森長が「大逆事件」にかかわりつづけたのはなぜなのか、その源泉とエネルギーはどこから来ているのか。それを訪う道行きが本作である。」(「あとがき」)そのために田中さんは冒頭、今でも交通の不便な徳島県の森長の故郷に出向かれ、彼が東京に出るまでの生育史を辿られる。まず「よくここまで」と私はうならせられた。本作全体を通じて、徹底的な調査と聞き書きがなされ、森長と「大逆事件」の被害者の人間が描かれる。田中さんにいただいた寒中見舞いに「表現というのは身を削るような作業です。」とあるが、読後実にそうだと感じた。なお田中さんの「大逆事件」に関する本はこの本をふくめて4作ある。『大逆事件』(岩波現代文庫)『飾らず、偽らず、欺かず/管野須賀子と伊藤野枝』『囚われの若き僧 峯尾節堂/未決の大逆事件と現代』(いずれも岩波書店)
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