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2018年12月30日03:11

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book『はらぺこの歌』『みかん仙人』(山本真理子)

引き続き山本真理子著『はらぺこの歌』『みかん仙人』(岩崎書店)を読んだ。『はらぺこの歌』は一家の大黒柱の父親が戦死し、主人公信ちゃんと妹2人を抱えた一家は生活に困窮して、一家心中寸前まで追い込まれる。話は担任のスギエ先生が信ちゃんに救いの手を差しのべ、大阪の和泉から和歌山のスギエ先生の実家(実家はキリスト教会)に移る。そこから特高による教会弾圧、和歌山空襲と波乱の展開となる。この話は父親が戦死した一家が追い込まれた戦中の過酷な事実とそこから立ちあがる信ちゃんとまわりの人びとの姿を描いている。私は戦中生まれで、物心ついて記憶にあるのは戦後で、父が戦死し、母ひとり子ひとりの貧しい生活だが、どこかにこの作品と共通した経験があり、私の経験と重ねて読んだ。「あとがき」には、「『お国のため』わが身を犠牲にする美徳、その美徳ゆえに弓折れ矢つきて、一家心中を企てた信ちゃん母子がいたことを知って、靖国の妻たちの生活はどんなふうだったのだろう?戦死者へ国はどの程度弔慰金を出したのだろう?と思うようになりました。」とある。作者の視線は戦争の問題の根幹を見ていると思う。『みかん仙人』は10編の和歌山の民話の再話で、山本さんがこの仕事から作家生活に入られたとのことで、実に豊かな民話の世界だった。なお絵は山本さんの娘さんふたりによるもので、実に楽しい絵本だった。
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