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2015年09月02日09:30

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植木等の幻の主演作を見た 『本日ただいま誕生』

全国公開されながら、その後フィルムが散逸し、幻の映画となっていた『本日ただいま誕生』を見ることができました。

1979(昭和54)年、東映の配給で全国公開されたものの、上映後にフィルムが行方不明に。
そもそも製作がトラブル続きだったようで、撮影途中で資金が枯渇し、主演の植木等の熱意で完成させたという曰く付きの作品です。


【物語】
昭和20年、シベリア抑留時に両足に凍傷を負った大沢雄平(植木等)は、満足な医療設備のない中、両足の切断を余儀なくされる。解放後、日本への帰国途中で大陸に置き去りにされるも、必死の思いで帰国。一度は人生に絶望するも、周囲の人びとにも支えられ、事業を起こすが…。


…監督の降旗康男は、近年は高倉健と組んだ作品群…『鉄道員(ぽっぽや)』『あなたへ』で知られていますが、この映画はキャリア初期の作品のひとつ。感動させたいのか、笑わせたいのか、サービス精神が旺盛で焦点が定まらない演出が難点です。

しかし、それを補うだけの植木等の熱演がありました。

東宝で量産されたクレージー・キャッツ映画の頃とはまったく異なる、両足が無くなった男をシリアスに熱演。前半、帰国した主人公は何度も辛い目に合うのですが、後半では、自ら髪を剃って出家するに至ります。その際、仏様に向かって「まあひとつこれからよろしくお願いしますよ!」と叫んでガハハと笑う姿に無責任男の姿が重なって見えるのが、植木等らしさでした。

東映配給作品らしく、川谷拓三や室田日出男、春川ますみらが共演しています。同時代のヤクザ映画のようです。

クレージーキャッツのゲスト出演は笑いどころではありますが、シリアスな作品には不要だったように思えます。


映画は丹念に修復され、滑らかなハイビジョン映像が美しい作品でした。
今のところソフト化は発表されておらず、日本映画専門チャンネルのみの放映となっています。

★★★。

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