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2021年04月21日10:49

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book『憲法を生きる人びと』(田中伸尚)

田中伸尚さんの新刊本『憲法を生きる人びと』(緑風出版)を読んだ。憲法を生き、闘っている10人の市民を鮮やかに描いた物語だ。(以下、本の表紙裏の文章に市民の名前を入れた)その人たちは、海の汚染に立ち向かい(川口祐二)、食の安全を求め(森山幸代)、戦争孤児として国家に抗い(金田茉莉)、日本の植民地支配がもたらした分断の歴史のなかで「無国籍」を貫いて生き(丁章)、思想・良心の自由を抑圧する「日の丸・君が代」に職を賭して抵抗し(増田俊道)、親の侵略責任を背負って贖罪の営みをつづけ(吉岡数子)、生活を移してまで日米合作の新基地建設に反対し(松井裕子)、南京に通いつづけて戦争とその責任を受け継ぎ(山内小夜子)、1人の法曹として憲法を実践し(岩場達夫)、天皇のための死から脱して主権者として生きる(原田奈翁雄)である。このうち、丁章、増田俊道、山内小夜子、吉岡数子さんは存知あげている。丁さんが「無国籍」と主張されるレゾンデートル、増田さんが日の丸・君が代反対に職をかけて闘う根っこにあるもの、被爆2世としての生き様、山内さんが南京へ通い続ける根底にある「接班人」(受け継ぐ人)という考え、吉岡さんが朝鮮に生まれ、父の侵略責任の原罪を引き受ける生き方について、この本でその深い意味を理解できて、大変うれしかった。最後の原田さんのところで自分に引き寄せて、大きな感動を覚えた。この項の中心は、1988年の暮れの木島等長崎市長の天皇の戦争責任発言から起こった一連の事件と『長崎市長への七三〇〇通の手紙 天皇の戦争責任をめぐって』を出版するまでの過程だ。私は教員時代、この事件の衝撃が冷めやらぬ長崎に、修学旅行に生徒を引率して行っている。私のクラスはこの時、長崎の朝鮮人被爆者の実態調査を進められていたルーテル教会の牧師の故岡正治さんと朝鮮人被爆者の徐正雨さんの話を教会で聞いた。その時のことがありありと蘇った。そして原田さんの出版人としての活動が、戦中の「皇国少年」(原田さんの言葉では「元・戦争ロボット」)としての原体験と結びつくことを生き生きと書かれている。実に感銘が深かった。憲法を生きる人びとを通して、現在社会をどう生きるかを考えさせらられた本だった。
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