山中恒著『昔ガヨカッタハズガナイ/ボクラ少国民のトラウマ』(勁草書房、2011年)を読んだ。1993年の初版本に1点の増補をしたものだ。「ボクラ少国民」シリーズの作業を終わった著者が、戦時下の被少国民体験を問い続け、あの時代の気分が充満する現状を批判する総括的な本だ。目次を引く。
男が家にいたっていいじゃないか(本末尊卑明分思想からの脱却)
一家の主は幸せだろうか(本末思想による倫理秩序)
親父の背中は反面教師だ(父権の後ろ盾は旧民法)
昔だって核家族だったんだ(大家族主義のからくり)
子どもなんて産めやしない(厚生省の創立、「産めよ殖やせよ国のため」)
公私混同してなにが悪い(滅私奉公主義からの訣別)
なぜ学歴なんかにこだわるのか(「東大信仰」の淵源)
子どもの悲鳴が聞こえないのか(学歴差別の「救い難き堕落」)
結婚適齢期なんて気にしちゃダメだ(戦後も生き残った「結婚適齢期」)
嫁いびりはめぐる因果の糸車(オワちゃんとヒラリーが教える彼我の大差)
「昔」の歯切れの悪い終焉(一億総懺悔の論理がはびこる)
これで山中恒の単行本をほぼ読んだことになる。なお新書本で手軽に読めるのには、『子どもたちの太平洋戦争/国民学校の時代』『暮らしの中の太平洋戦争/欲シガリマセン勝ツマデワ』(いづれも岩波新書)がある。
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