アントニオ猪木がNWF世界ヘビー級王座から「世界」の2文字を削除することに関しては抵抗はなかったようです。
前75年、猪木はNWA加盟を「条件付き」で認められた際、その中の条件の一つに「猪木のNWA世界王座への挑戦は1年以上は認めない」という項目があり、「それならこちらも世界を名乗らせてもらう」
と抵抗したのと、もう一つにはモハメド・アリと対戦する際、アリはプロボクシングのWBA、WBC統一世界ヘビー級王者であり、肩書きとして猪木もプロレスの世界王者という看板が必要だった為でした。
アリ戦も終わり、おそらく馬場側から何か言って来ることは想像に難くなく、言われたから削除するという感覚だったと思われます。
しかし、日本のプロレスファンはニューヨーク州バファローに本部を置いていたとされるNWF王座が世界の2文字を削除するという一大事が猪木の一存で決められてしまったことでNWFという組織が既に有名無実化していたことを知ることになる訳です。
プロレスラー同士である猪木とアンドレ・ザ・ジャイアントが「格闘技世界一決定戦」で対戦するというのは違和感を感じました。
これについて新間は「アリを病院送りにした猪木とチャック・ウェップナーを破ったアンドレによる対戦だから」と説明しています。
アリは猪木との試合で猪木のグラウンド状態からのローキックを15ラウンドに亘って受け続けたダメージからアメリカに帰国後、両足に血栓症を発症。
9月28日(現地時間)にニューヨークで予定されていたケン・ノートンとの防衛戦を延期する訳にもいかず、カリフォルニア州サンタモニカの病院に緊急入院しています。
猪木もまた、15ラウンド同じ姿勢でローキックを打ち続けていたことで右足甲を剥離骨折していたことが判明、本来なら次のアジア・リーグ戦は最終戦の蔵前以外は休みたかったところですが、アリ戦の風評被害による興行人気の下落から欠場も出来ず。
アンドレは同日(米国時間6月25日夜)行われたWWWFのニューヨーク・センチュリー・シェア・スタジアムのビッグマッチでヘビー級プロボクサーで元世界ランカーのウェップナーとミックスド・マッチで対戦しウェップナーをリング下に落としてのリングアウト勝ち。
スコアの上では引き分けだがアリを病院送りにし、事実上は勝ったという解釈の猪木とウェップナーを破ったアンドレの対戦だから格闘技世界一決定戦の看板を使いますよ、という話でした。
ウェップナーは翌77年には猪木と対戦する為に来日しており、またシルベスタ・スタローン主演でこの年アメリカで公開され大人気となった映画「ロッキー」のモデルとなったボクサー。
前75年3月24日にはオハイオ州クリーブランドでアリの世界ヘビー級王座に挑戦し9ラウンドアリからダウンを奪うも最終15ラウンドでTKO負け。
36歳で普段は酒の密売や用心棒で生計を立てていた売れないロートルボクサーが世界のアリに挑む姿を見たスタローンがロッキーのスクリプトを3日で書いた話は有名で、やはり世界王者のアポロ・クリード(カール・ウェザース)は客観的に見てもアリのイメージでした。
ウェップナーはこの一戦で全米に顔が知られるところとなり知名度の高さからアンドレの対戦相手に選ばれました。(当初アンドレはジェリー・クォーリーと対戦予定と発表されていた)
それがきっかけで後にハルク・ホーガンがロッキー3に出演し世界的な人気を博すようになる訳で、アリ、猪木、ウェップナー、アンドレ、ホーガン、ビンス・マクマホン親子、スタローンが80年代に入ると様々な形でリンクする訳ですから本当に「事実は小説より奇なり」で面白いと思います。
ログインしてコメントを確認・投稿する