76年6月20日日曜日昼の後楽園ホールではチケット代3,000円を徴求してのモハメドアリとアントニオ猪木の公開スパーリングが行われました。
アリはアメリカから連れてきたスパーリングパートナーのヘビー級ボクサー2人(ジミー・エリス、ロドニー・ボビック)を相手にしての実戦スパーリングを見せて、改めて世界最強の拳を見せつけました。
続いて猪木がTシャツを着用して登場、100.5kgに減量した為かかなりスリムに見えます。猪木はスパーリングパートナーである藤原喜明、木村たかし(健悟)らを相手にスライディングしてのローキック、延髄斬りの原型とも言うべき頭部を狙ったハイキック。
通路でこれを見ていたアリはこれを見て猪木の本気度を確認し、ルールの変更を要求して来ました。
元々、アリと猪木の一戦のルールはアリ側と新日本プロレス側との間で揉めながら試合の1か月前にようやく大綱が決められていました。
基本的にアリ側はボクシングのルール内ではほとんど自由であったのに対し、猪木側はグラウンド攻撃や関節技に厳しいチェックが入りました。
このルールについて東スポでは改訂がある度にその交渉経過と改訂箇所を細かく報道していましたが、朝刊スポーツ各紙ではそのあたりの経過は伝えられていませんでした。
ですから、試合会場で見ていた観客と、テレビ視聴者にはこの一戦のルールがほとんど知られていなかったのが実状でした。
要約すると、以下のようになります。
試合は3分1ラウンド制15ラウンド、試合は10カウントのKO、TKO、判定の他、プロレスの3カウントのフォールにより決着する。
アリはメキシコ製4オンスのグローブを着用、猪木は通常のプロレスリングスタイル。
猪木のグラウンド攻撃は15秒迄と決められていました。
しかし、アリはこの試合がフィックスファイトではなく、リアルファイトであると知るや、この日の公開スパーリングの後に次の点を禁止事項に要求して来ました。
猪木の立っている状態からのあらゆる攻撃(投げ技、打撃技)、頭突き、肘、膝等身体の鋭角的な部分を使った攻撃、頭部、頸椎、喉等鍛えられない部分への攻撃、爪先(トーキック)、足の甲での蹴りの禁止、ただし猪木が膝を着いたり、グラウンドにおける状態での蹴りは認められる、というものです。
アリ陣営はこれが飲めなければキャンセル料を支払ってでも試合をキャンセルして帰国する、と通告して来ました。
アリ側とのルール交渉に当たっていた新間寿営業本部長は「冗談じゃない、これでどうやって猪木に勝てと言うんだ!」と激怒しましたが、猪木は「新間、いいから(アリ側の言い分を)全て飲め。」と新間氏を諭しました。
大会まで6日間、この段階でアリを帰国させて興行が成立しなかったら猪木は致命的なダメージを負いかねません。
猪木はアリ側の全ての要求を飲むように新間氏に指示しましたが内心は忸怩たる思いが募りました。
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