86年全日本プロレス「ニューイヤー・ウォーズ SUPER BATTLE86」第8戦、1月9日山口県岩国市体育館(観衆3,100人満員発表)大会。
マイティ井上は渕正信と組んでアニマル浜口&寺西勇組のジャパンプロレス勢と対戦、4人中3人が国際プロレス出身者というタッグマッチは11分3秒、浜口が渕を回転エビ固めでフォールし、ジャパン軍団の勝利。
山口県は長州力の地元(徳山市、現在の周南市出身)とあって長州がメインイベントに出場、谷津嘉章&小林邦昭と組んで国際血盟軍のザ・グレート・カブキ&阿修羅・原&剛竜馬組と対戦。国際血盟軍絡みのメインイベントで大将であるラッシャー木村が出ないのはこれが初めて。
試合は13分35秒、長州がリキラリアットからの体固めで剛からフォールを奪い、快勝。地元に錦を飾りました。
帰国したニキタ・コロフ&クラッシャー・クルスチェフ組のザ・ロシアンズに代わり、この日からバリー・ウィンダム&マイク・ロトンド組のUSエキスプレスが特別参加。来日第1戦は鶴田&石川敬士組と対戦。10分4秒、ウィンダムが石川をコーナーポスト最上段からのダイビング・ラリアットから体固めに決めて初戦を白星で飾っています。
USエキスプレスのフィニッシュもダイビング・ラリアット、ザ・ロード・ウォリアーズ、ロシアンズのロシアン・シックルも同じ技で、飛ぶ高さは違いますが、ハーリー・レイスも前85年の来日からフライング・ラリアットをフィニッシュに使っており、当時の流行技でした。
セミ前に組まれたのは全日本対国際血盟軍、馬場&天龍源一郎組とR木村&鶴見五郎組の一戦、8分33秒、馬場が鶴見をカウンターの16文キックからの片エビ固めで降して貫禄勝ちを収めています。
ミル・マスカラスはジャパンの仲野信市とシングルマッチで対戦、6分10秒、ダイビング・ボディアタックからの体固めで完勝。やはり、前回の来日となる85年10月の「ワールド・チャンピオン・カーニバル」同様、今シリーズもマスカラスは中堅選手とのシングルマッチが多いです。
なお、パワーリフティングの元世界王者、トム・マギーは前日の1月8日松山・愛媛県民館(観衆2,700人発表)大会を最後に帰国。松山ではジャパンの新倉史裕にフライング・ニールキックからの体固めで勝ち、最終戦を白星で終えていますが、1月1日に長州との異種格闘技戦で敗れた以外は栗栖正伸(2回)、ハル薗田、仲野、渕正信、新倉と中堅クラスを相手に全勝で帰国しました。
タイガーマスク&サムソン冬木組の全日本本隊vsアポロ菅原&高杉正彦組の国際血盟軍の対戦は9分37秒、タイガーマスクが高杉をダイビング・ボディプレスからの片エビ固めでフォールし、全日本側に凱歌が上がっています。
この日から突如としてハワイのレスラーであるマイティ・ミロが参戦。薗田とシングルマッチを行っていますが、6分44秒、フィッシャーマン・スープレックスホールド(網打ち式原爆固め)で敗れています。
前歴不明、パンフレットにも載っていないミロですが、ハワイから来たことだけは確かで、写真から見てハワイ、サモアと言ったポリネシアンであることは明らか。前85年8月3日、猪木、坂口、藤波、木村健吾、ザ・コブラ等新日本プロレス勢が参戦したハワイ・ホノルル・アロハスタジアム大会に出場しています。
ミロはスティーブ・リーガル(82年7月、85年7月に全日本プロレスに来日)の保持するAWA世界ライト・ヘビー級王座に挑戦し、両者ダブル・フォールの引き分けに終わっています。
このアロハ・スタジアム大会はリア・メイビア未亡人派の興行で、メイビア未亡人は新日本プロレスと提携しており、そのルートからではないと思われます。私は以前、ミロの来日ルートに関して「馬場がハワイで静養していた際、売り込んだかも知れない」と書いたことがありましたが、
もう少し突っ込んで考えてみると、ハワイではメイビア未亡人派の前はエド・フランシスとPWF会長のロード・ブレアースが79年まで興行を打っており、全日本プロレス、馬場個人とハワイの繋がりは深く、ブレアース、もしくはハワイ在住のカール・フォン・スタイガーの口利きでトライアウト参戦が決まった、ということもあり得ます。
今シリーズ終了後、馬場以下全日本プロレス一行は初の台湾遠征を行いますが、それにスタイガーと、同じくアロハスタジアムの興行に出たキニー・ポポが参戦しており、そのラインではないかと推測致します。
第10戦、1月11日福岡県北九州市西日本総合展示場(テレビ生中継、観衆2,900人発表)大会。生中継とあって試合開始は午後6時。
井上の試合はテレビ中継に入る前に行われ、馬場&アメリカから戻ってきた佐藤昭雄がトリオを結成、原&鶴見&剛組の国際血盟軍と対戦、5分7秒、井上が剛をサマーソルト・ドロップから体固めに決めて全日本プロレス本隊の勝利となりました。
メインイベントは全日本対ジャパン軍団抗争、天龍&大熊組と長州&谷津組が対戦。長州らジャパン勢が来たことで奮起したのが天龍、石川敬士、それにこの大熊の3選手だと思います。
特に前座でナマクラを決め込んでいた大熊の対ジャパンに対する奮闘ぶりは特筆もので、勿論勝つことは厳しいですが長州の攻めを堂々と受けて立ち、ヘッドバットで長州を苦しめました。何よりジャパンのハイスパート・レスリングをタフで頑丈な肉体で真っ向から「受け切る」姿に全日本プロレスのファンは大熊に信頼を寄せていました。
試合は天龍と長州が場外乱闘をしている間、リング内で谷津が大熊にニークラッシャーからスピニング・トーホールドをに入り、そこから足4の字固め。この奇襲は大熊も読めなかったかギブアップ。9分12秒、谷津が大熊から勝ちを収め、ジャパン軍団の勝利。1月28日、東京体育館での鶴田&天龍組の保持するインターナショナル・タッグ王座挑戦に向けて好調な仕上がりを見せています。
セミファイナルにはテレビ中継初登場となるウィンダム&ロトンド組のUSエキスプレスが鶴田&冬木組と対戦。冬木も凱旋帰国して初のテレビ中継登場であり、鶴田のパートナーに抜擢されて存在感を発揮しておきたいところ。
鶴田がウィンダムのリストを取って自軍コーナーに投げると、コーナーポスト最終戦で待っていた冬木がダイビング・ボディアタック。綺麗に決まりましたがウィンダムは身体をくるっと入れ換えて冬木の上に乗って押さえ込み、カウント3。6分28秒、ウィンダムが冬木を体固めで破りUSエキスプレスの勝利。
巧いチームではありましたが、参戦予定だったダイナマイト・キッド&デービーボーイ・スミス組とタイプが違い、ガンガン攻めるタイプではなく、古き良き時代のオールドスクールのレスリングであり、物足りなさは感じました。
セミ前に組まれたのはマスカラスと石川のシングルマッチ、コーナーに詰めたマスカラスに石川が相撲タックル。これをロープを掴んで両足を上げてかわしたマスカラスが12分33秒、前方回転エビ固めでフォール勝ち。
今シリーズ、国際血盟軍と共闘しているカブキはジャパンの寺西とシングル戦。寺西がロープ際でバックドロップを放ちましたが、カブキはすかさずコーナーを蹴り、勢いで2人共に後頭部をマットにしたたかに打ち付けてダウン。両者ダブルフォールの体勢になりました、カウント2で上になっていたカブキが右肩を上げて、6分53秒、体固めでフォール勝ち。頭脳作戦で勝ちを拾いました。
タイガーマスク&薗田組vs小林邦昭&新倉組は6分16秒、タイガーマスクが新倉をジャーマン・スープレックスホールドで撃破。
ジャパン対国際血盟軍、浜口&栗栖組とR木村&菅原組は7分53秒、R木村が栗栖をラッシング・ラリアットから体固め。R木村と菅原の2人だけのタッグというのも非常に珍しいです。
謎のポリネシアン、ミロはジャパンの保永昇男とシングルマッチを行い、9分47秒、回転エビ固めで敗戦。ミロは前日の1月10日、山口・宇部市俵田翁記念体育館(観衆3,300人発表)大会でロッキー羽田に6分53秒、ブレーンバスターからの体固めで敗れており3連敗。3試合行ったのみで帰国してしまいました。日本のプロレスに通用するレベルではなかったのでしょう。
第13戦1月14日、鹿児島県立体育館(テレビ収録、観衆3,700人発表)大会。
井上はジャパンプロレスの仲野とシングルマッチで対戦、7分7秒、井上がサマーソルト・ドロップからの片エビ固めで勝利。
メインイベントは全日本対ジャパン軍団抗争、鶴田&石川組と長州&寺西組の対戦が組まれましたが、鶴田&石川組が珍しくゴング前から長州に遅いかかり、鶴田がイスで長州の脳天を殴打し、長州は流血、場外に落として2人がかりのハイジャック式パイルドライバー。
ダウンした長州の脇腹をイスで殴りつけ、長州は戦闘不能状態になり、控室ヘ退場。試合不成立となり、代わりにこの日既に1試合行っている谷津嘉章が寺西と組んで出場、試合開始のゴングが鳴りました。寺西が石川をボディスラムに抱えたところ、石川が滑り降りて咄嗟にバックに回って逆さ押さえ込み。僅か3分2秒、カウント3が入り、鶴田&石川組の勝利に終わりました。
脇腹を痛めた長州は1月28日、東京体育館でのインターナショナル・タッグ王座挑戦に赤信号が灯りました。
しかし、この流れは前84年2月3日、新日本プロレス札幌中島体育センターでの藤原喜明長州襲撃テロリスト事件と同3月22日、尼崎市記念公園体育館での猪木&藤波辰巳&藤原組vs長州&アニマル浜口&谷津組の試合前の寺西以下維新軍の奇襲により、猪木が左肘を攻撃されて戦闘不能となり、代わりに坂口征二が出場した時のパターンと酷似しており、その時の焼き直しであることは想像に難くないです。
全日本とジャパンの軍団抗争も2年目に入り、マンネリ化しつつあり、話題作りと思いますが、普段から遺恨とか因縁には無縁で対ジャパン迎撃の前面に立っていない鶴田がいきなり先に仕掛けたのはいささか無理があったように思います。
「雪の札幌事変」、「尼崎の猪木襲撃」は後にファンに語り継がれていきますが、この「鹿児島の乱」はほとんど印象に残っておらず、殺伐としたアングルは全日本プロレスには不向きだと言うことがよくわかります。
セミファイナルは馬場&天龍組がウィンダム&ロトンド組のUSエキスプレスと対戦、馬場がウィンダムにカウンターの16文キック、ロトンドがカットに入り、怒った馬場はロトンドとウィンダムを場外に投げてそのまま両軍入り乱れての場外乱闘となり11分31秒、馬場とウィンダムが両者リングアウトの引き分けとなりました。
マスカラスはジャパンプロレスの新倉とシングルマッチで対戦し7分54秒、ダイビング・ボディアタックからの体固めで完勝。1月28日、東京体育館での小林邦とのIWA世界ヘビー級王座防衛戦に向けて好調な仕上がり。
谷津&浜口&栗栖組vsR木村&カブキ&原組の6人タッグマッチは10分52秒、R木村が栗栖をラッシング・ラリアットから体固めに決めて国際血盟軍に軍配が上がりました。
全日本対ジャパン、タイガーマスク&ハル薗田組vs小林邦昭&保永昇男組は22分10秒という当時としてはロングマッチとなり、小林邦が薗田の首固めを一回転させた逆転の首固めでフォール勝ち。マスカラス戦に向けてこちらも負けられません。
大熊&冬木組と鶴見&菅原組は9分57秒、大熊が菅原をジャンピング・ヘッドバットからの体固め。冬木と菅原はM井上に連れられ、国際プロレス崩壊後同じ時期に全日本プロレスに入団しているだけにお互いに心中複雑と言った感じでした。
この試合で鶴見のバックドロップを喰らい、着地を誤った冬木は右肋骨を骨折してしまい、翌日から欠場、1月28日に予定されていたタイガーマスクとのシングルマッチはキャンセルとなり、代わりにカブキがタイガーマスクと対戦することが決定しています。
1月14日鹿児島県立体育館で鶴田と石川敬士の奇襲攻撃を受けて右脇腹を負傷した長州力は翌15日の熊本・八代市総合体育館大会を欠場、第15戦の1月17日、広島県三原リージョンプラザ(観衆2,600人発表)で復帰。
井上はベテラングレート小鹿と組んでジャパンプロレスの永源遙&笹崎伸司組の一戦は、11分56秒、M井上がジャパンの若手である笹崎をサマーソルト・ドロップからの片エビ固めで破り全日本のベテラン軍が勝利を収めました。
メインイベントで全日本対ジャパン軍団抗争頂上対決、鶴田&天龍&石川組と長州&谷津&浜口組が組まれました。
鶴田に対して怨み骨髄の長州は谷津、浜口と連携して鶴田にリング上でのハイジャック式パイルドライバー3連発、それだけでは足りないとばかり鶴田を自軍コーナーに逆さ吊りにして3人がかりでストンピングの嵐、10分2秒、ジャパン軍団の反則負けとなりました。長州達は鹿児島のリベンジを果たし溜飲が下りましたが、惜しむらくは三原大会はテレビ中継がなく、この報復劇が会場にいた観客と報道陣しか生で観ることが出来なかったことです。
やはり全日本プロレスは遺恨試合とか因縁の抗争を大会場興行でのクライマックスに向けて作り上げていくのが苦手なようです。「線」ではなく「点」で終わってしまうところが何とも勿体ない。
セミファイナルではウィンダム&ロトンド組のUSエキスプレスが登場、ジャパンの寺西&新倉組と対戦、8分21秒、ウィンダムが新倉をダイビング・ラリアットからの片エビ固めに降し、完勝しました。
セミ前に組まれたのは全日本対国際血盟軍、タイガーマスク&薗田組とカブキ&原組。15分43秒にカブキが薗田を正拳突きから体固めに決めてカブキ&原の異色コンビの勝利。
マスカラスはジャパンの仲野とシングルマッチで対戦、5分29秒、ダイビング・ボディアタックからの体固めで仲野を問題とせずに破りました。
全日本対国際血盟軍、馬場&佐藤&大熊組という全日本プロレス旗揚げメンバートリオが実現、R木村&鶴見&剛組の国際血盟軍と6人タッグで対戦、10分52秒、連日、上位陣相手に奮闘している大熊がジャンピング・ヘッドバットからの体固めで剛を撃破。御大・馬場に勝ち星を献上しています。
ジャパン対国際血盟軍、小林邦&保永組と菅原&高杉組は10分21秒、小林邦が高杉をフィッシャーマン・スープレックスホールドでフォールしジャパン軍団の勝利となりました。
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