85年全日本プロレス「世界最強タッグ決定リーグ戦」は終盤にさしかかり、12月12日日本武道館での優勝戦に向けて連日激しい星の潰し合いが展開されています。
終盤のヤマ場、第15戦、12月7日山形県体育館(テレビ生中継、観衆4,300人発表)大会。3週連続のテレビ生中継とあって試合開始は午後6時。
マイティ井上の試合はテレビ中継開始前に組まれ、ジャパンプロレス栗栖正伸とシングルマッチで対戦4分10秒、サマーソルト・ドロップからの体固めでM井上の勝利、やはりこのあたりはテレビ生中継に合わせて試合を巻きで進行しているとしか思えません。
午後7時からの生中継。今回も生中継と言うことで放送開始から試合の流れを追っていきたいと思います。
前半の試合が長引いたか冒頭から公式戦には入らず。第6試合の全日本対国際血盟軍、馬場&ドリー・ファンク・ジュニア&大熊元司組とラッシャー木村&阿修羅・原&剛竜馬組の終盤から突入。10分17秒、大熊が剛をジャンピング・ヘッドバットから体固めで倒し全日本軍の勝利。
この日は生中継とあって公式戦が3試合組まれました。セミ前に組まれたのは長州力&谷津嘉章組とハーリー・レイス&ジェシー・バー組の一戦。12月1日、後楽園ホールでの同一カードによる前哨戦では長州がバーをリキラリアットからの体固めで破りピンフォール決着がついていましたが…。
長州がバーにサソリ固め、レイスがこれをカットに入りました。すると谷津もリングに入ってレイスにドロップキック、一撃でレイスは場外へ転落。怒ったレイスはイスを持ってリング内へ。喧嘩の強さには定評があるレイスがキレたか、と思われましたがこれはレイスの罠。
長州はイスを持ってリングに入って来たレイスに突っかかりイスを強引に奪いにいきました。しかしリング上でのイス攻撃は明らかに反則、レフェリーが止めようとイスを押さえ、1つのイスをレイス、長州、レフェリーが奪い合う展開に。
長州がイスを奪いレイスの脳天を殴打。静止に入るレフェリーにも暴走のイス攻撃。14分32秒、長州の反則負けが宣せられ、レイス&バー組が初白星。長州&谷津組はやらずもがなの連夜の反則負けを喫してしまいました。
レイス&バー組は1勝2敗2時間切れ引き分け。失点6の4点。長州&谷津組も1勝2敗2時間切れ引き分けと同じく失点6の4点。ジャパンプロレス代表として初参加初優勝を狙い全日本マット制圧を目論む長州&谷津組は優勝争いから大きく後退。
セミファイナルは公式戦、スタン・ハンセン&テッド・デビアス組とニック・ボックウィンクル&カート・へニング組が対戦。ハンセン組としては線の細いカートに照準を定め、ハンセンのウェスタン・ラリアットかデビアスのパワースラムで一気に勝ちにいきたいところ。
しかし、ニックは予想外の粘りを見せました。ニックがデビアスを攻撃、そこへハンセンが入ってきてキック、ニックを場外へ叩き落とし、リングインしてきたカートにハンセン、デビアスが2人がかりで殴る蹴るのめった打ち。ニックもリングにカムバックしリング上で4人入り乱れての乱闘。
止めに入ったレフェリーにエキサイトしたハンセンとデビアスが2人がかりで暴行。8分36秒、ハンセン&デビアス組の反則負け。ハンセン組は手痛い初黒星。ニック&カート組が反則ながら嬉しい初白星を挙げ、1勝3敗、失点6の2点。ハンセン&デビアス組は3勝1敗2両リン、失点6の6点とこちらも足踏み状態。
メインイベントは公式戦、鶴田&天龍源一郎組がダイナマイト・キッド&デービーボーイ・スミス組と激突。スミスが天龍を担ぎ上げ、キッドがコーナーポスト最上段からスミスの身体を飛び越して、ダウンしている鶴田にダイビング・ヘッドバット。たまらず鶴田は場外へエスケープ。
スミスも天龍にドロップキックを放ち場外へ。そのまま4者による場外乱闘となり、16分48秒、両チームリングアウトによる無得点試合となりました。鶴龍コンビは2勝1敗1時間切れ引き分け2両リンの失点5の5点。キッド&スミス組も2勝1敗1時間切れ引き分け2両リンの同じく失点5の5点。
山形大会では首位グループがこぞって無得点試合という波乱がありハンセン&デビアス組が1点差で辛うじて首位に。これを鶴龍コンビ、キッド&スミス組が追う展開に。長州&谷津組は一歩後退です。
第16戦、12月8日、福島県いわき市総合体育館(観衆3,100人発表)大会。
井上は渕正信とタッグを組み、ジャパンプロレスの前アジア・タッグ王者チームの寺西勇&保永昇男組と対戦し20分時間切れ引き分け
メインイベントで予定されていた、鶴田&天龍&石川敬士組と長州&谷津&小林邦昭組の一戦は石川の腰の負傷による欠場でカード変更され、ビザ切れの為にメキシコ、プエルトリコ修行から凱旋帰国して来た冬木弘道改めサムソン冬木が鶴龍コンビのパートナーとして出場しています。
鶴田&天龍&冬木組vs長州&谷津&小林邦組の6人タッグマッチ60分1本勝負が行われ、13分11秒、両チームリングアウトの引き分けとなりました。冬木は凱旋マッチがいきなりメインでジャパン軍団のトップと対戦ということになりましたが、フォールを取られることなくドローに持ち込んだのは評価出来ます。
セミファイナルは馬場&大熊組とハンセン&デビアス組が対戦。今シリーズ、天龍の不調、石川の欠場でハンセン&デビアスと当たる機会の多い大熊でしたが、この日は5分20秒、デビアスのパワースラムからの片エビ固めに敗れ、玉砕。
セミ前に組まれたのはタッグリーグ公式戦、ニック&カート組とR木村&原組の国際血盟軍の対戦。ニックとR木村は国際プロレス時代にAWA世界ヘビー級、同タッグ王座を賭けて何回も対戦しています。
R木村の攻めをノラリクラリと逃げるニック。ロープに腕が絡み動けなくなりました。そこへカートが助けに入りましたが原もリングインして2人がかりでカートをニックの身体にぶつけていきました。エキサイトしたR木村&原組止めに入ったレフェリーもカートにぶつける暴挙に出て、9分46秒、国際血盟軍の反則負けが取られています。
ニック&カート組は相手チームの反則を巧みに誘発して2連勝、2勝3敗、失点6の4点。R木村&原組は1勝3敗2時間切れ引き分け、失点8の4点となり自力での優勝は困難になりました。
ラス2興行となる第19戦、12月11日、前橋市群馬県スポーツセンター(観衆2,500人発表)大会。
この日、ハンセンは風邪の為欠場、発表されていたスペシャルマッチ、ドリー&鶴田&天龍組vsハンセン&キッド&スミス組の6人タッグマッチは中止。また、石川の負傷欠場で馬場&石川組vsR木村&原組の試合も中止になりました。
井上は第2試合で後に世界ジュニア・ヘビー級王座を巡ってライバル関係になる渕とシングルマッチで対戦し20分時間切れ引き分け。
メインイベントは長州&小林邦&寺西組とR木村&原&剛組の国際血盟軍が対戦、9分45秒、長州がリキラリアットからの体固めで剛を降し、10分足らずでジャパン軍団が完勝しています。
セミファイナルはタッグリーグ公式戦、レイス&バー組とニック&カート組のNWA、AWA対決が組まれました。
12月3日愛知県体育館での前哨戦ではレイスがかつてのタッグパートナー、ラリー・へニング(長くAWA世界タッグ王座を2人で組んで保持、ラリーは若いレイスに目をかけて組んで闘うことで育成した。81年の最強タッグでは、この年6月にダスティ・ローデスに敗れNWA世界ヘビー級王座から転落、重圧から開放されたレイスはセミリタイアだったラリーに声をかけて、「恩返し」とばかり馬場に売り込みエントリーしている)の息子であるカートを11分57秒、片エビ固めでフォールしレイス&バー組が勝利を収めていますが…。
公式戦では4者入り乱れての場外乱闘となりましたが、レイスがカートをアトミック・ドロップの要領で抱え上げ、場外の柵に叩きつけるという荒技に出てリングに上がり、11分32秒、試合権利のあるレイスがカートにリングアウト勝ち。レイス&バー組が大きな勝ち点2を拾い2勝2敗2時間切れ引き分け、失点6の6点で優勝への望みを繋げ、翌日の最終戦、12月12日、日本武道館でのキッド&スミス組との公式戦を残すのみになりました。
ニック&カート組は2勝4敗1時間切れ引き分け、失点9の5点でリーグ戦全日程を終了しています。
セミ前に組まれたのは変更カード、鶴田&天龍組とキッド&スミス組のスペシャルマッチ、12月7日、山形県体育館での公式戦では両チームリングアウトの無得点試合となっていますが、翌日の優勝戦の為にも両チーム共に勝っておきたいところ。
しかし10分9秒、またしても両チームリングアウトとなり、決着は持ち越しへ。
谷津とデビアスの夢のシングルマッチは9分4秒に両者リングアウトの引き分けとなりました。守りの堅い二人だけに勝敗を決するのは難しかったか?
馬場&ドリー組が永源遙&新倉史裕組と対戦、馬場と新倉は初対決。7分59秒、ドリーが新倉をテキサス・クローバーホールドでギブアップさせて馬場&ドリー組の楽勝に終わりました。
同じく全日本対ジャパン、タイガーマスク&冬木組vs栗栖&保永組は10分57秒、タイガーマスクが栗栖を前方回転エビ固めに丸め込み、全日本軍の勝利。
シリーズ最終戦、12月12日日本武道館(テレビ収録、観衆10,600人発表)大会。同リーグ戦は11月23日、後楽園ホールでの開幕戦から1日のオフもない20連戦。過酷な日程でしたが、暮れのヒット興行でもあり、従来から最強タッグの興行を買っているプロモーター達に加え、ジャパン側のプロモーターも併せて興行を買ったのでこのようなスケジュールになりました。
全日本プロレスではこの年から最強タッグ優勝戦の舞台を格闘技の殿堂、日本武道館で開催することになります。77年の「世界オープン・タッグ選手権」から続く蔵前国技館(78年のみ札幌中島スポーツセンターを使用、蔵前大会はリーグ戦途中に開催)は老朽化の為84年大相撲秋場所を最後に取り壊し。両国国技館がオープンしましたが、敢えて馬場は長州力率いるジャパンプロレスを引き入れたことで「日本プロレス界の覇者」たるべく両国国技館より収容人員の多い(定員14,451人、現在は改装により14,471人に変更されている)の日本武道館開催で勝負に出ました。
しかし、残念ながら10,600人と満員マークはつかず。新日本プロレスは12月6日に両国国技館で「IWGPタッグ・リーグ戦」を開催、猪木&坂口征二組vs藤波辰巳&木村健吾組、ブルーザー・ブロディ&ジミー・スヌーカ組vsディック・マードック&マスクド・スーパースター組の2大公式戦(前田日明以下UWF戦士の来場あり)を持って来ましたが、優勝決定戦ではなかった為かこちらも8,750人発表と満員とは程遠い数字なりました。
選手大量離脱などネガティブな要素が多かった新日本プロレスは自滅した感じでしたが、豪華メンバーを集めた全日本プロレスの暮れの看板シリーズも、新日本プロレスとの興行合戦には勝ったものの、思った程の盛況ではなく、長州らジャパン軍団も参戦して1年近く経つと新鮮味が薄れて来ていました。
井上は最終戦は第3試合に出場、ジャパンプロレスの新倉とシングルマッチで対戦、7分18秒、サマーソルト・ドロップからの片エビ固めで井上が完勝しています。
さて、リーグ戦ですが、この日の公式戦最終日までで優勝の可能性があるのが6点のハンセン&デビアス組、レイス&バー組。これを5点で追うのが鶴田&天龍組、馬場&ドリー組、長州&谷津組、キッド&スミス組。こちらの6チームが優勝の可能性を残していました。
今回はリーグ戦の行われた順に試合を振り返りたいと思います。
セミ前に組まれたのがレイス&バー組とキッド&スミス組の公式戦。レイスはキッドのダイビング・ヘッドバットを自爆させました。キッドはたまらず場外へ転落しダウン。レイスはエプロンから場外のキッドめがけてお返しのダイビング・ヘッドバット。これはヒットしましたが、そのまま場外乱闘となり、7分57秒、レイスとキッドが両者リングアウトの無得点試合となりました。
レイス&バー組は2勝2敗2時間切れ引き分け1両リン、失点8の6点で公式戦全日程終了。セミ、メインの結果待ち。キッド&スミス組は2勝1敗1時間切れ引き分け3両リン、失点9の5点で公式戦全日程終了。優勝戦線からは脱落しています。
セミファイナルの鶴田&天龍組と馬場&ドリー組の公式戦は馬場&ドリー組がノラリクラリと鶴龍コンビの攻めをかわし、両チーム共に決め手に欠けて30分時間切れ引き分け。鶴田&天龍組は2勝1敗2時間切れ引き分け2両リン、失点8の6点、馬場&ドリー組も1勝0敗4時間切れ引き分け2両リン、失点8の6点で公式戦全日程終了、メインの結果待ちとなりました。
注目のメインイベント、ハンセン&デビアス組vs長州&谷津組の公式戦最終試合。ハンセン&デビアス組が勝てば8点で優勝、長州&谷津組が勝てば7点で優勝、時間切れ引き分けならハンセン&デビアス組が7点で優勝、両リンなら長州&谷津組は脱落、残り4チームによる優勝決定戦となる訳です。
試合は試合巧者デビアスが巧みに長州&谷津組のハイスパート・レスリングを捌き、試合をリードしていきます。長州&谷津組は体格的にはハンセン&デビアス組を下回り、持て余している様子。両チームとも決定打はなく、30分時間切れ引き分け。ハンセン&デビアス組が3勝1敗1時間切れ引き分け2両リン、失点7の7点、最多得点となり、初優勝。ハンセン個人では83年大会でブルーザー・ブロディとの超獣コンビで優勝して以来2度目の優勝。
長州&谷津組は力一歩及ばず、1勝2敗4時間切れ引き分け、失点8の6点に終わりました。
優勝のハンセン&デビアス組が7点、準優勝には鶴田&天龍組、馬場&ドリー組、長州&谷津組、レイス&バー組の4チームが6点で並びました。
5位で最下位が5点のニック&カート組、キッド&スミス組、R木村&原組の3チーム。
この年は白星配給係なし、選手の商品価値を落とさないいかにも馬場らしい配慮のある得点状況となりました。一方で不調チームを作らない互助会的な予定調和の配点でリーグ戦本来の盛り上がりには欠けました。優勝戦のセミファイナル、メインイベントが2つとも時間切れ引き分けに終わって優勝が決まったのはインパクトが弱かったように思います。
公式戦外の試合結果です。ニック&カート組はジャパンの寺西&栗栖組と対戦、6分59秒、ニックが栗栖をラリアットからの体固めで降し、最終戦を締めくくりました。
全日本対国際血盟軍、大熊&冬木&渕正信組とR木村&原&剛組は11分40秒、原が渕をヒットマン・ラリアットからの片エビ固めでフォールし、国際血盟軍の勝利。
全日本対ジャパン、タイガーマスク&ハル薗田組vs小林邦昭&保永昇男組は11分19秒に両チームリングアウトの引き分け。保永はこの1年、全日本との対戦でその技術に磨きがかかり、一段上に行ったと思います。
また、同日仙台・宮城県スポーツセンターで新日本プロレス「IWGPタッグ・リーグ戦」優勝決定戦が行われていますが、当日昼間に出場予定だったブルーザー・ブロディ&ジミー・スヌーカ組が、東北新幹線で仙台まで行ったものの、試合をボイコットして東京ヘ引き返すと言う事件が起きています。
ブロディ、スヌーカボイコットの報を聞いたマスコミが「ブロディとスヌーカは全日本プロレスの日本武道館に姿を現し、馬場に全日本復帰を直訴するのではないか?」と馬場に「ブロディ、スヌーカ試合ボイコット」をリーク。これを聞いた馬場は「絶対に入れるな!」と若手、スタッフに厳命し、入口、通用口に待機させていました。
結局、ブロディとスヌーカは全日本の会場に姿を現すことはありませんでしたが、日本武道館には緊迫した空気が流れていたことは確かでした。
3月に新日本プロレスヘ移籍を果たしたブロディでしたが、9か月足らずで新日本とトラブルを起こした訳です。馬場はブロディを79年1月の初来日から6年以上使って来ており、改めて馬場のプロモーターとしての力量が再評価されたことになりました。
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