76年3月25日、ニューヨークのプラザホテルにおいてプロボクシングWBA、WBC統一世界ヘビー級王者モハメド・アリと日本のプロレスリングNWF世界ヘビー級王者猪木とのワールド・マーシャルアーツ・ヘビーウェイト・チャンピオンシップの調印式が行われています。
桜井さんは東スポの特派員としてこの調印式の模様を余すところなく取材しました。
公表されたアリのファイトマネーは約600万ドル(約18億円、1ドル300円試算)、猪木は約200万ドル(約6億円)。猪木はアリの1/3のファイトマネーであるが、興行の収益、及び全米で放送が予定されているクローズド・サーキット(有料による衛星生中継、今で言うところのパブリック・ビューイングに近いシステム)の収益が入り、最終的にはアリとほぼ同等の金額が入る仕組みとの説明がありました。
アリ側はアリのプロボクシングの興行権を持つトップランク社のボブ・アラム、リンカーン・プロモーションのロナルド・ホームズらが出席。
猪木側は猪木の他に猪木夫人である(当時)倍賞美津子さん、新間寿営業本部長、坂口副社長、NET(テレビ朝日)常務取締役辻井博(後の新日本プロレス代表取締役会長)、通訳としてケン田島が同行。
浅い紺色のシャツに同色のズボンとアリは本当にスタイリッシュに決めていてお世辞抜きに世界のスーパースターらしい雰囲気。
対する猪木は黒の紋付き袴スタイルで登場、まさに日本の侍を彷彿とさせる和を基調にした正装で登場。
91年、UWFインターナショナルの高田延彦がトレーバー・バービックとの一戦を前にモチーフとしたあのスタイルです。
アリは冒頭、「俺は600万ドルではこの試合をやらない、ギャラを上乗せしろ!」とアピールし調印式の緊張感が一気に高まりました。
猪木を見るや、「おい、ペリカン野郎!本気で俺と試合をする気か?お前はクレイジーだ。お前の長い顎に俺のパンチがちょっとでもかすったらあの世行きだ!やめるんなら今だぞ」と早くも先制「口撃」。
アリのスポーツマンシップとは真逆の対戦相手をこきおろすマイクアピールはプロレスラーのゴージャス・ジョージ、フレッド・ブラッシーのマイクを見て研究されたもので、アリは実はプロレスが大好きでした。
プロスポーツとしてのショーマンシップを60年代に取り入れたアリのマイクは対戦相手を動物に例えることで有名で、長い顎がトレードマークの猪木は「ペリカン」。
600万ドルを拠出するだけでも大変なのにここへ来てアリはファイトマネーの上乗せを要求。
しかし、猪木について来た美津子さんを見るや途端に格好を崩し、
「そこにいる美しい女性は誰だ!?猪木のワイフだって?醜いペリカン野郎によくこんな美しい女性がワイフについたもんだ。美しいワイフに免じて600万ドルではやらないが、610万ドルで負けてやる、ただし、俺が勝ったらお前のワイフは俺がもらうぞ!」と美津子さんの笑顔に負けた?アリは610万ドルで承諾しました。
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