校舎から出た燿はグラウンドで駆けまわっているサッカー部の練習を見つめた。
皆一生懸命だ。
自分は・・・・どうなのだっただろうか。もちろん自分のカは出したし、頑張ったかどうかと聞かれれば、頑張ったと言えるだろう。
・・・・しかし、結果はどうだっただろうか。
PROJECT-STAR-LIGHTは優勝したし、出来レース騒動もなんとか乗り越えた。しかし・・・・それは・・・・自分の手腕だったのだろうか。100パーセント全部とまではいわないが、殆どはメンバーそれぞれの頑張りがあったからで、自分はいなくても優勝出来たのではないかと・・・・。
風祭史記の息子で小さいころから父親の活動を目にしてきた。自分も出来そうだと軽く思っていたところもあった。しかしやってみると・・・・結構大変だった。子供の頃から父親に色々と教えてもらっていたのでノウハウはあったものの、やはりやってみると・・・・責任重大な仕事という事がわかる。大げさではあるが、預かるアイドルの人生を預かっている気さえする。
彼女達の方向性はこれでよかったのか。
個性は活かせただろうか。殺してはいないか。
この1年間、メンバーが活動しやすい環境作りが出来ただろうか。
思うところは他にもあるが・・・・ここで落ち込んでても仕方がない。反省したところで、もう活動は終わったのだ。とりあえず帰ろうとグラウンドを後にし、校門へ向かう。
すると・・・・校門のところに白いワンピースに白い帽子にグラサンをつけた女性が立っていた。燿がその前を通り過ぎようとすると、呼び止められた。
燿「・・・・はい?」
「よかった。なかなか出てこないからもう帰っちゃったかと思ったわ」
燿「僕に何か用ですか」
「何かって。ちょっと話があるの。いいかしら?」
燿「えっと・・・・どちら様で?」
「どちら様ってヒドイわ・・・・」
そう言いつつ、グラサンを取る。誰だろうと顔を見た燿。どこのどちら様ではない人物がそこにいた。
草薙愛架だった。「忘れられちゃうなんて悲しい・・・・」とちょっと頬を膨らませる愛架。3人の子供がいる母親とはおもえない可愛い表情であるが・・・・それはそれとして。
燿「あああすいません愛架さん。えっと・・・・律音ちゃんならもう帰ったかと。あ、いや、僕に用でしたっけ?」
愛架「ええ。ちょっと話があるの。いいかしら?」
一体何の話だろうか。愛架について学校を後にした。
愛架「燿君。律音の面倒を1年間みてくれてありがとう。あの子、この1年間で随分成長したわ」
燿「いえ・・・・律音ちゃんの実力があってこそですよ」
愛架「そうかしら。プロデューサーの手腕如何だと思うけど」
燿「・・・・そうでしょうか」
愛架「ええ。プロデューサーの手腕によってはアイドルを活かすも殺すも結構影響力があるものよ。いくらプロだからといってタレントに嫌な仕事を強いるのも、嫌なイメージや個性を強要するのも。そんな事をさせてたら亡くすものもあるし」
燿「・・・・亡くすもの?」
愛架「信頼関係」
燿「しんらい・・・・かんけい・・・・」
愛架「この1年、私はたまに律音に部活動について聞いてたわ。律音の返事はいつも同じ。’楽しくやれている’と」
燿「そうですか。でも優勝後の出来レース騒動の時は苦しい思いをさせてしまいましたね。結局、月宵月華にたくさん助けられる事になりましたけど」
愛架「月宵月華はあのイメージ回復路上ライブと、単独ライブの時に’STAR-MINEは盟友だ’とか言ってたけど、あれはあなたが?」
燿「いえ。律音ちゃんが」
愛架「そう。でも、それを’相手はライバルだからと’プロデューサーのあなたが必要以上に親しくしない’方向だってとれたはず。でもそれをあなたはしなかった。その結果、信頼関係がとれて、助けてくれた。それだってあなたの手腕でもあるわ」
燿「そうでしょうか。ただ何もしなかっただけですよ」
愛架「いいえ。プロデューサーだからといって、何から何まで徹底する事は無いわ。時には手を出さない事が必要なところもある。それに」
燿「それに?」
愛架「何から何まで手を出すと、うるさいプロデューサーだとか、何もかもがプロデューサーに縛られた自由がきかない活動、窮屈な活動だって嫌われるかもね♪」
・・・・確かにそれはあるかもしれない。燿は苦笑。それにしても、芸能界の第一線で活動中の彼女の言葉は色々とためになる。史記とも親しいし、アイドル目線のアドバイスもくれるし、さすがトップアイドルだった人だと思わされる。
2人で歩きながら会話していると、「ここにしましょう」と駅前の大通りにある喫茶店で立ち止まった。そして愛架は店内へ。燿もそれに続く。色々と会話はしたが、きっとこれからが話の本番であろう。
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