「別冊ゴング」74年12月号より、ストロング小林との再戦が決まったアントニオ猪木へのロングインタビューの続きです。(聞き手・竹内宏介編集長)
竹内「猪木さん自信は小林をどう評価していますか?特に最近、悪党になったと言われている小林について。」
猪木「3月に闘った時の小林はね、ハッキリ言ってガッツが薄かったですよ。私自身、胸を貸してやる、というつもりでリングに上がったんだが、小林は硬くなっちゃって…。私を意識して、それも変な言葉で言えば、私にのまれてましたよ。
それだけが3月の時の勝因ではないが、私は闘う前に既に勝っていましたよ。こいつは『ウサギ』みたいな肝っ玉の持ち主だな、と思いましたね。ところがアメリカに行ってからの小林を見ていると、実にふてぶてしくなっている。勝負度胸というか、ファイティング・スピリットがはっきり身についてきていますね。
猪木に勝つ為にアメリカで鍛え直してくやる、というヤツのセリフも気に入っていますよ。それで、どんな鍛え方をするのかと注意して見ていたら、何か恥も外聞もなく田吾作スタイルで悪党ファイトをやっている。
小林はIWAの世界タイトルを25回も防衛した男だ。仮にも世界チャンピオンだった男がそこまで自分をかなぐり捨てて踏み切る、というのは立派だと思うんですよ。
ヤツの悪党技術…反則や乱闘術をどうこう言う訳じゃない。そんなものはどうってことないが、そういうガッツ、捨て身の根性を身に付けたという点を私は評価したいですね。元々、技術と力は持っている男だし、筋金が一本通ったんじゃないですか。
まあ、今度12月に闘う時は3月の小林ではないと思いますよ。私も全力を上げて闘うが、小林も死物狂いになってアタックしてくるでしょう。2度もこの私に挑戦してくるとは、いい根性だよ!」
竹内「月並みな質問だが、今度の試合についての自信の程は?」
猪木「私は今誰と闘っても負けない、という自信がある。小林の現在の力を高く評価はしているが、私は負けませんよ。小林には気の毒だが、返り討ちですよ。この私が負ける訳がない。」
竹内「恐るべき自信だが、あなたの勝つという根拠のポイントは何ですか?」
猪木「ハッキリ言えることは強い方が勝つということですよ。それに私は人の3、4倍は練習しているし、常に生命を賭けて闘っている。負ける訳がないじゃないですか!」
竹内「しかし、小林もブルーノ・サンマルチノに挑戦、サンマルチノを苦しめ抜いている力がありますよ。」
猪木「しかし、サンマルチノには勝っていない。私だったらサンマルチノをKOして勝ってますよ。その自信はある。ニューヨークのビンス・マクマホン(シニア)氏から来春、ぜひマジソン・スクェア・ガーデンに登場してくれと依頼されている。
これは行くつもりではいるんですが、その時はサンマルチノと闘って、今言った言葉がホラではないということを立証してみせますよ。私は自信があるから、デカいことを言うんです。」
竹内「わかりました。大変な自信には恐れ入りました。(カシアス)クレイ(モハメド・アリ)も顔負けです。」
猪木「クレイとやっても勝つ自信はある。ハッハッハッハッ(笑)…そこまで言っては天下の大ボラ吹きになっちゃうかな。しかし6〜7年前かな?サンマルチノが公開挑戦状を叩きつけたらクレイは逃げたんですよ。プロレスラーは格闘士として世界で一番強いと私は思いますね。」
竹内「それはそれとして、猪木さん自身、今度の小林戦にどのような意義を求めていますか?」
猪木「闘う以上、そこに何らかの意義がなくてはいけない。意義のない闘いはしたくないと思います。小林の挑戦を受けると言うことは、これは普段から私が口癖のように言っている、
『チャンピオンたるものは常に自分の力を立証しなくてはいけない、その為には誰の挑戦でも受ける』という公約の実行ですね。
まあ、負ける気はしない。それと3月に小林に勝ち、大木さんにも勝った。もし今度また小林に勝ったら、日本選手権ということも考えていいんじゃないか。
とは言っても勝手に名乗る訳にもいかないし、小林戦終了後…小林に勝ったら、それを実績として全日本プロレスのジャイアント馬場さんと国際プロレスの吉原(功)さんにアピールする。日本選手権の開催をね。
小林戦終了後に、この問題で重大発表を行いますよ。具体的には今は言えないが、小林戦の結果を楽しみにしていて下さい。」(了)
この時点で76年6月26日に日本武道館で「格闘技世界一決定戦」で対戦することになるプロボクシングWBA、WBC統一世界ヘビー級王者モハメド・アリ(カシアス・クレイ)の名前が竹内氏と猪木の間で出ているのも興味深いです。
猪木がついに「日本選手権」という言葉を口に出しました。元国際プロレスのエースで、団体の看板タイトルであるIWA世界ヘビー級王者として25回の防衛記録を樹立し現役王者のまま国際プロレスをも退団した小林と元日本プロレスの最後のエースとしてインターナショナル王座を保持している大木金太郎を破り、さらに小林を再戦で撃破すれば、残るは全日本プロレスの御大・馬場を倒して、日本選手権者を名乗るのみ。猪木は野望に燃えていました。
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