WWF北米ヘビー級王者パット・パターソンが王者となった時期には前回書いた79年6月のペンシルバニア州アレンタウン説ともう一つ、同年10月22日ニューヨークMSGでのWWF定期戦でインターコンチネンタル王者パターソンと北米ヘビー級王者デビアスがダブルタイトル戦を行い、パターソンが勝って2冠王となった、という説もあります。
が、これはおそらく間違いで79年7月2日にパターソンがボブ・バックランドのWWFヘビー級王座に挑戦した時既に北米ヘビー級王者を名乗っていましたのでやはり6月19日のアレンタウンが有力です。
ただし、この試合も実際に行われていたかどうか確証はありません。
パターソンのAWAにおけるラストマッチは6月24日コロラド州デンバーでのジム・ブランゼルとの試合であるという記録が残っており、パターソンは26分1秒、十八番の足4の字固めを逆にかけられてギブアップ負けしています。
ローカルテリトリー時代は、残った選手に負けて出ていくのがこの世界の掟でありこの直後にバックランドと互角の試合をするパターソンが、格下のブランゼルに負けたのは納得いきますが、デビアスから北米ヘビー級王座を奪ったのが6月19日とすると、パターソンはAWAを離れる前にデビアスに勝って北米ヘビー級王座に就いていることになります。
さて、10月22日のMSG定期戦に関しましては別冊ゴング79年12月号にレポートが載っており、パターソンはデビアスと北米ヘビー級王座の「防衛戦」を行っており、7分54秒、回転エビ固めで勝って防衛に成功。日本で坂口征二の挑戦を受ける、とあります。
当時WWF定期戦レポートははゴング誌の「加山浩特派員」のほぼ独占であった為、これを信用するしかないですが、この週の金曜日10月26日には後楽園ホールで新日本プロレスの「闘魂シリーズ」が開幕、パターソンは開幕戦で長州力に足4の字固めで勝利しています。
このシリーズ前半戦の目玉商品はアメリカンドリーム、ダスティ・ローデスの新日本初参戦でした。
ローデスのブッキング最優先権を持っていたのはフロリダのエディ・グラハムで、グラハムは4月のジャック・ブリスコに次いでローデスを新日本にブッキング。
ローデスは8月21日フロリダ州タンパでハーリー・レイスを破りNWA世界ヘビー級王座を獲得、5日後の26日にはフロリダ州オーランドでレイスにベルトを奪い返され5日天下に終わっていますが、来日前のこの実績も新日本プロレスに取っては願ってもない美味しい材料でした。
レイスはローデスが新日本に来日した時期を同じくして全日本プロレスに参加しています。
ローデスは11月1日札幌中島スポーツセンターでアントニオ猪木のNWFヘビー級王座に挑戦していますが、その前日の10月31日、全日本プロレスの愛知県体育館で馬場がレイスを18分29秒、ランニング・ネックブリーカードロップから体固めで破りNWA世界ヘビー級王座を獲得しています。
この時の馬場の王座獲得は「レイスに勝ったローデスより強かった猪木」を新日本にアピールされる前に自分が本家本元のNWA世界ヘビー級ベルトを奪ってしまおう、という作戦だったと思われます。
それともう一つ。闘魂シリーズ終盤戦にはWWFヘビー級王者バックランドの特別参加が決まっており、今回猪木とのタイトル戦は11月30日徳島市立体育館と12月6日蔵前国技館の2回。
過去3回のバックランドの来日では猪木の挑戦は1度きり。
これを馬場が知らない訳がありません。自分が過去にやって来たことです。
「今度は猪木がWWFのベルトを巻く」
これを察知した馬場が先制攻撃でレイスからNWA世界のベルトを獲得し自分の方が格上であることをアピールしたのでした。
札幌で行われた猪木とローデスのNWFヘビー級選手権試合は猪木がローデスをジャパニーズ・レッグロールクラッチでフォールの体制に入りましたが、その前にローデスがレフェリーのミスター高橋に暴行を加え、高橋はフォールカウントが数えられず17分1秒、猪木の反則勝ちで25度目の防衛に成功しています。
馬場は11月5日全日本プロレス宮崎県串間市民体育館でレイスのリターンマッチを退けた後11月7日尼崎市記念公園体育館でレイスに敗れ王者転落。74年12月のブリスコの時と同様7日天下に終わりました。
11月8日新日本プロレスの小樽市総合体育館で坂口はパターソンのWWF北米ヘビー級王座に挑戦。前週の札幌でのタッグマッチによる前哨戦、坂口、藤波組vsパターソン、グレッグ・バレンタイン組の試合で1本目王者パターソンをフォールしながらも左足を集中攻撃され2本目、パターソンの足4の字固めでレフェリーストップ負け。3本目ダメージが回復せず無念の試合放棄となった坂口は序盤からパターソンに左足を狙われ大苦戦。
パターソンの足4の字の前に苦しめられましたが、これを逃れると今度は逆にパターソンのお株を奪う足4の字固めの奇襲攻撃。
まさかの自分の得意技を仕掛けられたパターソンはたまらずギブアップ。8分40秒、足4の字固めで坂口が勝利。WWF北米ヘビー級王座を獲得しています。
坂口は試合後、前シリーズでタイガー・ジェット・シンに奪われたNWA北米ヘビー級王座との統一戦をアピールしています。
札幌で不透明決着に終わった猪木とローデスは双方納得がいかず、この日ノンタイトルで再戦しています。
猪木は「勝った方がバックランドのWWFヘビー級王座に挑戦しよう」と11月30日徳島でバックランドに挑戦が決まっているにも関わらずこの試合はWWFヘビー級王座次期挑戦者決定戦として行われました。
試合は猪木がローデスを大流血させて13分52秒、リングアウト勝ちを収めていますが、シリーズ途中でアメリカに帰国が決定しているローデスが勝ったところでそのまま日本に残留してバックランドに挑戦するなどとはまず考えにくく、挑戦者決定戦は無理なこじつけだったと思います。
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