78年9月19日、大阪府立体育会館でのタイガー・ジェット・シンと上田馬之助の時間無制限1本勝負はシンの反則負けに終わり、「ヒール度としてはシンが上回った」という評価でしたが、「ヒールvsヒール」、あるいは「ベビーフェイスvsベビーフェイス」というの好むというのは日本人位で、アメリカではまずヒール同士、ベビーフェイス同士というのは組まれません。
例えば、ドリー・ファンク・ジュニアvsジャック・ブリスコ、アブドーラ・ザ・ブッチャーvsザ・シークなどの試合でも必ず一方が(シークの場合は相手が全部ベビーになる)ヒールになって試合をします。ルー・テーズであっても地域によってベビーとヒールを使い分ける。これが出来ないとNWA世界ヘビー級王者は務まりません。
プロレス興行の基本は勧善懲悪であり観客はそれに感情移入して観る。ですからヒールがゲームメーカーとなり観客心理を煽って試合を組み立てていくのが一般的です。「どちらのヒールの方がより悪いのか?」というのは日本人固有の視点と言え、これにはやはり「真剣勝負が好きな国」という国民性が強く根付いているかと思います。
さて、この試合がどのように観客の目に映ったかと言えばやはり「面白かった」とは言い難い試合でした。猪木のレフェリングについても「猪木が目立ち過ぎて誰が主役かわからない」、もう少し後の時代の言葉で言えば「美味しいところを持っていく」ような意見が強かったのは確か。
しかし、私は「猪木がレフェリングしたからこそ、15分近い試合が成立した」と考えます。シンと上田が猪木とやり合う場面で攻守が入れ替わる展開で、猪木は自分の試合同様に、レフェリーとして試合を引っ張って見せたかと思います。
シン、上田とも普段から奇襲攻撃と場外乱闘以外はリング内では首を絞めること位しか出来ず。両者とも、シンはグレート・ガマの流れを組むインドレスリングと馬場の師匠フレッド・アトキンスに仕込まれたシュートの技術があり、上田も日本プロレス時代からセメントの強さでは定評がありますが、プロモーターである猪木より目立つことは基本的には出来ません、それを見せることはこの対決ではまず無理。
仮にこの試合をミスター高橋が裁いたとしたら2〜3分、長くて5分以内にお互いに首を絞め合ったまま場外で派手にやり合って両者リングアウト、両者反則、ノーコンテストのいずれか、シンのリングアウト勝ちのような結果に終わったんではないでしょうか?おそらく2人ともやることがもうなくなってしまいます。
これが「ワールド・リーグ戦」、「MSGシリーズ」の公式戦で組まれていたら、おそらくテレビ生中継の冒頭で流し、2〜3分やってCM入れて次の試合につなぐというやり方でもいけたと思いますが、府立のメインイベントであり、丁寧に仲間割れのアングルを作り込んでいったのが成功し、この試合見たさに9,500人の大観衆を動員したのですから短時間で終わらせる訳にもいかず、その上での猪木レフェリー投入だったと考えます。
セミファイナルは日本人同士のタッグマッチ45分3本勝負、坂口征二&ストロング小林組と藤波辰巳&木戸修組の一戦。この試合は北米タッグ選手権試合にしてもよかったカードだと思います。
1本目は13分15秒、藤波がS小林のブレーンバスターを滑り降りての逆さ押さえ込みでカウント3。2本目は5分2秒、S小林が木戸をカナディアン・バックブリーカーでギブアップさせ、決勝の3本目は2分24秒、坂口がアトミック・ドロップから体固めで取り、2−1で坂口&S小林組が勝利を飾りました。
売出し中の藤波ですから、クイックでS小林から1本奪うのは許容範囲だとしても、2本目はS小林が直接カナディアンで藤波からギブアップを奪って「ジュニアとヘビーの壁」を見せることはして欲しかったなと。藤波に「勝ち逃げ」を許させたのは残念でした。
藤原喜明とピート・ロバーツのシングルマッチは11分46秒、Pロバーツが後方回転エビ固め(公式決まり手は後ろ回転押さえ込み)でフォール勝ち。永源遙はジョー・ロッシーに8分38秒、片エビ固めでフォール勝ち。
長州力の欠場、猪木の試合不出場の影響か不定期参戦の山本小鉄が星野勘太郎とのヤマハ・ブラザーズを結成して登場、ジンバ・カーン&ジョニー・マンテル組とタッグマッチ30分1本勝負で対戦、13分1秒、星野がJマンテルを体固めで降してヤマハの勝利に終わっています。
「ゴールデン・ファイト・シリーズ」第26戦、9月20日、三重県松阪市総合体育館(観衆3,000人超満員発表)大会。メインイベントは猪木と上田の今シリーズ4度目のシングルマッチ60分1本勝負。前日の大阪大会で猪木の左肘に攻撃を加え、ダメージを負わせた上田は執拗に腕を狙っていきましたが、9分34秒、バックにドロップからの体固めで猪木がフォール勝ち。
セミファイナルは藤波&星野組がシン&Pロバーツ組と対戦したタッグマッチ45分3本勝負。1本目は14分51秒、藤波とPロバーツが両者リングアウトで1−1。決勝の2本目は3分42秒、シンがコブラクローから星野を体固めで破り、2−1でシン&Pロバーツ組の勝利。
坂口はロッシーを8分21秒、片エビ固めで破り、S小林は永源を9分10秒、体固めで撃破、木戸はJマンテルに11分2秒、エビ固めでフォール勝ちしました。
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