74年8月16日、コロラド州デンバー・スポーツアリーナで行われたとされるビル・ロビンソンとスーパースター・ビリー・グラハムによるIWA世界ヘビー級選手権試合。
1本目は12分51秒、ロビンソンが片エビ固め、2本目は6分24秒、グラハムが体固め、決勝の3本目は2分5秒、グラハムが体固めに決めて2−1でグラハムが勝ち、第8代IWA世界ヘビー級王者になっているという報道で、3本勝負で「2フォール奪われて負けたことがない」(70年5月19日、仙台市レジャーセンターでサンダー杉山に敗れ、初代同王者の座から転落した時は3本目はエプロンでのカウントアウト負けであった)ロビンソンが、「まだ見ぬ強豪」のグラハムに負けた、というのは衝撃的ニュースでした。
しかし、前回書いた通り3本目はグラハムのセコンドについたバロン・フォン・ラシクが杖状の凶器を使ってリング下からロビンソンの足を掬ってグラハムが覆い被さってのフォール勝ちで、レフェリーがラシクの介入に気がつかず3カウントを入れてしまった、というオチがあって「実力負けではない」ことが強調されていました。
日本のファンに「グラハムは汚い勝ち方をした、ロビンソンは負けていない」と思わせる手法ですが、当時はお互いにAWA地区で試合をしていたことは間違いありませんが、当日の記録を見ると、ロビンソンはイリノイ州ピオリアでバディ・ウォルフとシングルマッチで対戦して勝利。
グラハムはテキサス州ヒューストンのサム・ヒューストン・コロシアムのポール・ボーシュの興行に出ており、テキサス・マッケンジーに3本勝負で勝ち。
前日の8月15日には両者揃って、カナダ・マニトバ州ウィニペグのAWAの興行に出場、ロビンソンはレイ・スチーブンスに負け、グラハムはラシクと組んでザ・クラッシャー(リソワスキー)&イワン・プトスキー組に負け、という記録が残されており、少なくともデンバーではAWAの興行は行われていないことがわかります。
日本では「ゴング」74年10月号がカラーグラビア2ページで、「月刊プロレス」74年10月号では誌面後半のモノクログラビア1ページに写真が掲載されていますが、グラハムのタイツが2誌で違っており、ゴングはブルー一色の、月プロではトランクスとニータイツが色違い。
どちらも両者どちらかがIWAベルトを締めていたり、ラシクがリング下にいる写真はなし。つまり両誌とも他の日に行われたロビンソンとグラハムの試合写真にキャプションを付けて報じている、今で言えばフェイクニュースに該当するでしょう。もちろん当時はそれを指摘する人は誰もいません。
新IWA世界ヘビー級王者となったグラハムは9月15日、後楽園ホールで開幕の「スーパー・ワイド・シリーズ」に待望の初来日、ラシクも同時来日しています。
9月23日から、東京12チャンネルによるレギュラー放送「国際プロレスアワー」が毎週月曜日午後8時より1時間枠でスタート。関東ローカル局である東京12チャンネルで、全国ネットのTBSには劣りましたが、それでも決まった放映権料が入って来るのは国際プロレスにとっては大きかったです。(放送開始当初は年間52週間のうち、30週が国際プロレスアワーで残りはプロボクシング中継など違う番組が入った、76年に契約が見直され基本的に年間全て国際プロレスアワーに改定された)
放送開始第1弾は同日の日大講堂(観衆3,000人発表)からの生中継、ラッシャー木村&グレート草津組がグラハム&ラシク組を2−1で破りIWA世界タッグ王座を防衛。また東京12チャンネル側の意向で旧日本女子プロレス、旧東洋興業女子プロレスの小畑千代、佐倉輝美、千草京子による女子プロレスが組み込まれ、小畑がファビュラス・ムーラを破りIWWA世界女子王座を防衛しています。(開幕戦の後楽園ホール大会は9月30日に録画放送)
新王者グラハムはリニューアルされた新しいベルトを巻いての来日、グラハム迎撃に抜擢されたのは175cm、108Kg、25歳のマイティ井上。井上はグラハムのIWA世界ヘビー級王座に3連続挑戦、10月1日、大分県営体育館では2−1で負け、10月5日、愛知県体育館では1−1から両者リングアウト、10月7日、埼玉県越谷市体育館で1−1から逆さ押さえ込みでグラハムをフォール。第9代王者となっています。
11月4日、後楽園ホールで開幕の「ワールド・チャンピオン・シリーズ」ではAWA世界ヘビー級王者バーン・ガニア、ロビンソン、AWA世界タッグ王者チームのニック・ボックウィンクル&レイ・スチーブンス組を1度に呼び、新日本プロレス、全日本プロレスに対抗。
11月20日、蔵前国技館(テレビ収録、観衆4,500人発表)ではAWA地区の黄金カード、ガニアvsロビンソンによるAWA世界ヘビー級選手権試合を組み1−1から両者カウントアウトによる引き分け。
翌11月21日には大阪府立体育会館(テレビ収録、観衆6,200人発表)でAWA世界ヘビー級王者ガニアと地元大阪市福島区出身、IWA世界ヘビー級王者井上がダブルタイトルマッチで対戦、1−1から両者リングアウトの引き分けとなりました。井上は開幕戦の後楽園ホールでスチーブンスを2−1で降して初防衛に成功しており、これが2度目の防衛となりました。
同日、AWA世界タッグ王者チーム、ニック&スチーブンス組とIWA世界タッグ王者チームの木村&草津組がダブルタイトルマッチで対戦1−1から日本組が反則負けになっていますがルールによりタイトルの移動はなし。
蔵前は外国人超大物対決を組みましたが集客は厳しく、費用対効果でいけば赤字、ミネアポリスやセントポールで常に10,000人以上動員している黄金カードでしたが日本のファンには馴染みが薄かったか?大阪は井上の地元ということもありそこそこ入ったと言えます。
関東ローカル局ながら東京12チャンネルの放送が開始されたことで国際プロレスはどうにか息を吹き返し、団体存亡の危機を脱しました。
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