入院2日目。輝莉は主治医が様子を見に来た時、一晩考えた事を話した。
これからの事。続けるのか辞めるのか。
自分がどうしたいのか。一晩考えた。自分の夢をとるか、身体をとるか。
そして決めたコト。
輝莉「先生。昨日言われた事も分かりますが・・・・私、やっぱりアイドルになりたいです」
「そう言うと思ったよ。まぁ古い言葉で、’若い時の苦労は買ってでもしろ’っていうのがあるらしいし。医者としてはおすすめ出来ないけど、頑張ってみるのもいいんじゃないかな」
意外にもすんなり許可がもらえたが、せめて今回はもう少し点滴入院をしてもらうとの事。この日はSTAR-MINEのメンバーもお見舞いに来てくれて応援の言葉を賜った。それで俄然やる気が出た輝莉だが、入院中は大人しくしている事にした。
夕方。見舞いにきた燿と乃愛と星名に続けたい意思を伝えると・・・・こっちも「そういうと思った」というお答え。
乃愛「大丈夫なのですか?」
輝莉「たぶん。先生も’若いときのくろーは買ってでもしろ’って言ってたし」
燿「随分古い言葉をもってきたなぁ。でもまぁ分かった。先生がいいっていうなら」
輝莉「続けてもいいの?」
燿「ああ。ここでやめたら苦労が台無しになるしね。でも輝莉ちゃん。倒れるまで頑張っちゃだめだよ?」
星名「よかったね。まだやっていいってさ」
先生はいいというが、プロデューサーの燿がダメと言ったら出来ない。そこを許可してくれたのならもうあとは関東予選まで頑張るだけだ。
ただし倒れない程度に、だけど。
夜。せめて曲の聞き込みだけでもと燿が置いていったMP4プレイヤーで曲を聞きながら窓の外に臨む月を見つめた。
他のチームも頑張ってるんだろうな・・・・と漠然と思う。
倒れることなく頑張ってるんだろうな・・・・とも思う。この入院はロスタイムとしか思えない。
思えないが・・・・これからの事を考えるいい機会ではある。
夢はアイドルになる事。それは変わらない。それに向かっていく頑張りは惜しまないつもりだ。
それがこの結果である。
「走りすぎた・・・・のかな・・・・」とぽつりと呟く。頑張りすぎはよくない。それが今回よくわかった。プレイヤーで再生される乃愛と星名の歌っている動画をみる。自分が伝えた振り付けも練習してあるようで振りも込みでやっている。
退院できたら自分もここに混ざろう。遅れを取り戻さなければ。ただし、頑張りすぎない事だ。
「そう、走りすぎたのさ」
輝莉「っ!?」
ぽつり呟いた言葉の’返し’が聞こえてきてバッと反射的に天井をみた。
忍者がいた。忍者が天井に張り付いていた。その忍者は「とぉっ!!」と降りてくる。
忍者ではない。カメラを首から下げた響介だった。
輝莉「六土さん・・・・いつのまに・・・・なんでここに?」
響介「美人な看護師おねえさんを撮りに・・・・いや、君を撮りに」
何か・・・・本音がでた気がするが・・・・気にしないでおこう。
輝莉「私を撮りに?」
響介が言うには、倒れたのはもう学校中の噂で、急遽号外新聞を出す事になったという。そこに元気そうな姿の輝莉の写真を載せて完成としたいので撮影に来たらしい。あと、退院の日にも撮りに来るのだとか。「笑って笑って」と笑顔の写真を撮ると、満足気の顔。
輝莉「皆にも心配かけちゃいましたよね。先生にも」
響介「まぁ元気そうでよかったよ。さっきも言ったけど、君は走りすぎたんだ。ちょっとここで立ち止まるといい。ただし、退院後は走るんじゃなくて歩く程度にね」
輝莉「歩くくらいで・・・・関東予選、勝てますか?」
それが不安で仕方ない。
響介「まぁ一番運動神経がよさそうな君だ。大丈夫じゃないか?仕上げには間に合うと思うけど。水着で歌うし、男票はイケるんじゃないかな」
輝莉「恥ずかしいですけどね」
響介「堂々とやるといい。でも恥ずかしそうに歌うのもそそる・・・・いや、可愛いし、どっちにしても票は取れるんじゃないか?女性票はやっかみで票取れなさそうだけど」
勝率・・・・五分か。不安なコメントだが、ここまで決まったのだし、やるだけやろう。それだけはもう心に決めてある。
「じゃあごゆっくり」と言い残してドアから出て行った響介だが・・・・彼にどこから入ってきたのか聞くのを忘れていた。
輝莉「ドアも窓も閉まってた・・・・よね・・・・?変な人。でもありがとうございます♪」
ドアに向かってお礼を呟き、眠りについた-------------------------
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