獣道を闇雲に歩く。もうどこをどう歩いたのかわからない。携帯をつけてみて時間をみる。7時を過ぎていた。もうだいぶ歩いている。
疲れたので開けた場所を見つけたので座って休む。天を仰ぎ見ると満月が雲1つなく輝いている。まるで自分と月しかこの世にいないようなもの寂しさがあった。
今頃・・・・家では騒ぎになっているだろうか。きっとなっているだろうな。練習時間に帰らないどころか連絡も入れていないのだから。帰ったところでまた厳しい練習があるのだ。今日くらいはサボりたい。
そう思っていると・・・・前方の繁みがガサガサとうごめく。一体何がそこにいるのか。まさか妖魔か。持ち歩いていた自分用の弓を用意しようとしたところでそのうごめいていたものがでてきた。
灯莉「・・・・たぬき・・・・??」
でてきたのは両手に収まるくらいの小狸だった。つぶらな瞳で人間を怖がらずに灯莉を見つめていた。
可愛い。つい手をだすと、子狸は嬉しそう?に近づいてくる。そして灯莉の手をペロペロなめる。
灯莉「お前も1人?お母さんかお父さんは?」
その問いには答えず子狸は見上げてくるだけ。それはそうだ。返事したらなにものなんだ。
「あっ」と灯莉のおなかがなる。もう晩御飯の時間だ。そういえばと学校の家庭科実習で作ったクッキーがあるのを思いだして鞄から取り出した。いくつか袋に入っているクッキーを全部半分に割って・・・・狸に差し出した。狸はクッキーと灯莉を交互に何度かみると・・・・クッキーを食べだした。自分もクッキーを口にする。なんだか癒される時間だった。動物には癒しの効果があるのだろうか。種類によるだけろうけど。小型動物に限るだろうか?
クッキーを食べ終えると狸を抱っこしてやる。狸は暴れずに抱きかかえられている。随分人慣れしているようにも思えるが・・・・首輪も名札もない。ただの野良狸だろうか。
・・・・名札?そういえばなんて読んだらいいのだろうかやっぱり名前を付けてあげたほうがいいのだろうか。
灯莉「名前かぁ。・・・・・・・・ね、ぽん太って呼んでいい?」
「きゅ〜」
喜んでいるのか嫌がっているのか分からないが可愛い声をあげた。試しに何度か呼んでみたが反応を示した。ぽん太で決定でいいだろう。
灯莉「・・・・はぁ」
狸の友達??はできたが、憂鬱な事態が進展したわけではない。これからどうしたものかと思ったが・・・・自分がここに来たいきさつをぽん太に話した。動物に話をしても聞いているのかいないのか。しかし心が幾分か楽になった気がする。
灯莉「という訳なんだ。っていっても分からないよね」
ぽん太「きゅ〜?」
満月を見上げる。雲がかかっていない綺麗な満月。その光に照らされて2人にスポットライトがあたっているような。ぽん太と2人だけの時間。とても穏やかだ。折角の出会いだ。なにかして遊ぼう。とはいえ森の中を歩き回る訳にもいかない。とりあえずは出来るかどうかわからないが、「お手」を教えてみる事にした。すると30分で出来るようになった。わりと賢い子狸だ。
灯莉「おりこうさんだね〜」
ぽん太「きゅ〜ん♪
頭を撫でてやると嬉しそうにしている。このあたり、犬とかと変わらないかもしれない。
灯莉「ねぇ、ぽん太はずっとここに住んでるの?」
ぽん太「きゅ〜」
灯莉「お父さんとお母さんは?いないの?」
ぽん太「きゅ〜・・・・・・」
なんとなく会話が出来ているようないないような。しかしなんとなくわかった。きっとぽん太はひとりぼっちなのだと。自分は家族がいる分、マシな気もする。
灯莉はぽん太を遊び、時間を忘れた。そうする事で現実逃避するかのように-----------
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