時は2000年代。世間に知られることなく行われている妖魔と魔王との戦い。魔王との戦いは熾烈を極め、生き残る事も困難とされている。
東京某所の弓道施設。建物は古く、ところどころ瓦屋根が空透けて見えるところをみるに建てられてかなり経っているのが窺える。その弓道場は個人所有の建物で、隣には住居施設もある。
この日も弓を射る音が弓道場に響く。中学生くらいの女の子が袴姿で練習をしていた。
名前は理条灯莉という。まっすぐ的を見据え、矢を放っている。矢は的を射てはいるが、中心ではない。ギリギリ的に当たっている程度であるが、1本も外れの矢はない。
しかし傍らの母親は叱る。中心を射ろと。高校生でも中心に当てられる人も少ないだろうに。しかし母親が厳しいのには理由がある。この理条家も先の妖魔と魔王の戦いに参戦しているのだ。狙った所に矢を放てないといけない。敵は止まっているわけではないのだ。動いている敵に当てなければならないので、ちょっとのズレで外せば当たらない。次の矢を構えるまでに襲われてしまうだろう。命はない。だから母親も厳しく指導しているのである。
「もっと弦を引いて!!手をブラせない!!ああまた外した!!」
実際は的に当たっているので外れてはいないが、母親の中では中心以外は外れなのだろう。完璧な矢を求められている。
この日の練習は2時間行われた。中心には3本当たったが-----------
「ダメね。それでは使い物にならないわ」
灯莉「でもお母さん・・・・中心には3本----------」
「2時間で3本ではただのマグレよ。もっと精度を上げなさい。それではレインヴィルも適合者と認めないわ」
レインヴィルとは理条家に伝わっている宝弓である。弓が持ち主を選ぶと言われ、母親は認められなかった。だから娘に宝弓を託したいのだろうが・・・・厳しすぎではないだろうか。まぁ娘に戦死してほしくないのもあるだろうけども。
灯理の練習は数日間、学校帰りに行われていた。その度に母親のお叱りの言葉を受けて・・・・実際練習も憂鬱になってきていた。敵を倒せるように、生き残るようにと指導してくれているのは痛いほど分かるが・・・・
(そこまで厳しくしなくてもいいのに・・・・)
と思いつつ、今日も今日とて弓の練習。そして母親のお叱りの言葉-----------
次の日の放課後。今日も練習するので帰ってこいと母親にいわれているのだが・・・・
もう疲れた。母親のお叱りに耐えながらやるのは。どうして戦う家に生まれてしまったのだろう。
もういい。
(・・・・サボっちゃお・・・・)
夕方、家には帰らず、携帯の電源も切ってしまい、街中をアテもなく歩いた。とりあえず家には帰りたくない。トボトボ歩きながら思う。レインヴィルに認められたら母親もすこしは喜んでくれるだろうか。あれだけ練習しているのにどうしてレインヴィルは応えてくれないのか。それとも、なにかベクトルの違う理由で応えてくれないのか。
なんかそういうのも考えるのも疲れちゃったな・・・・戦いに行くのにも。妖魔、怖いし。死ぬのも怖い。でも行かなければならない。
灯莉は薄暗くなってきた街中を離れ、夜の森へとはいっていった。
今は1人になりたい。でも夜の街中に制服の中学生が歩いていたら何があるかわからないし。森の中ならと思い、獣道を進んでいった--------------
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