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2019年07月10日00:33

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総論1「城攻めの三戦法」合戦考証61

○史料根拠は先に提示しました。ここからは総論です。「細川忠興・忠利往復書簡」の記述によって、城攻めにもパターンの相違があると判明しました。

●Cランク「城の規模に比較して、城内の防衛兵力数が大きく不足する場合」
●Bランク「防衛兵力数は充足するが、その人数を支える兵糧が不足する場合」
●Aランク「防衛兵力数も充足するし、その人数に応じた兵糧も充足する場合」

○敵城が「どの状況にあるか」によって、攻撃方法が変わります。Cランクの場合は「城乗り戦法」です。敵軍に数倍する兵力を動員して、全軍で「一気に城へ乗り込めばいい」だけのことです。四方から同時に攻め込まれた敵は、防衛もできずに終わることでしょう。Bランクの場合は「干し殺し戦法」です。敵が充分な兵力で、防御を固めているようなところに向けて、わざわざ攻め込んでいっても、味方に被害を出すだけです。しかし敵軍は「兵糧が不足している」ので、長くは籠城できません。兵糧の残量が不安になってくれば、敵のほうから出てくるしかないのです。砦を築いて、防御を固めて、敵側の攻撃を待っていて、「攻めてきたところを返り討ちにすればいい」わけです。Aランクの場合は「仕寄(しより)戦法」です。兵糧が充分にあれば、簡単には敵も出てきてくれませんし、だからと言って、こちらが乗り込んでいけば、敵の充分な防御の前に、こちらが返り討ちにされるだけのこと。ゆえに「仕寄」で敵城に接近し、至近距離から鉄砲で攻撃し、敵の防御をはがしてしまったのちに、城へ乗り込んでいく方法です。

○要するに「城攻め」という言葉は、城を「攻撃する」ことの意味ではないんです。敵城に向けて「攻撃的に布陣する」ことであって、言わば「戦術」の手段です。そこから先の「攻撃行動」は、敵城の状況に応じて選ぶべき「戦法」となります。しかし細川忠利でさえ、手紙の中では「城攻め」と「城乗り」の言葉を混同して使っていました。江戸期の大名たちには、言葉の定義もハッキリしなくなっていたようです。今ではもう完全に誤解されたまま。歴史学者の合戦解釈においてさえも、「城攻め=城乗り」という「史料理解」でしかないのが現状です。

○たとえば「関ヶ原合戦」に関連する「城攻め」の例。通説レベルで語ってきたのは、どれも単に攻撃するだけの話です。けれど、手紙史料の記述は違うんです。

●『日本戦史』五二「毛利輝元、宇喜多秀家の感状」一部抜粋
「今度城際迄各被押詰、則時に乗崩、鳥井彦右衛門を始、八百余被打果候」

○『日本戦史関原役』の巻末附録史料です。「五二号」の感状は「伏見城を落とした」ときのもの。このときの伏見城には「数万にのぼる徳川の大軍」が籠城していたのでしょうか。そうならば「Aランク」ですが、通説でも「鳥居ら数人の武将が留守番で残っていただけ」と言っているんです。巨大な規模の伏見城に、千や二千の留守番兵力しかいなかったなら、どう考えても「Cランク」だし、手紙には「即時に乗り崩し」の記述があるんです。状況と戦法が一致しますよね?

●『日本戦史』五五「長束、石田、増田、徳善院の奉行連署状」一部抜粋
「城々悉請取、田辺一城、町、二ノ丸まで令放火、責詰、仕寄申付候。落居不可有程候」

○「五五号」は、大坂の「四人の奉行」が、大分県にある「細川家の飛び地領」に送った手紙です。細川家の本領地「丹後」の田辺城の状況を、わざと教えてあげることで、「あなたは敵対しないほうがいい」と言っているもの。言わば「降伏勧告」です。田辺城は「一ヵ月以上も籠城を続けた」と、通説でも言うわけですが、だったら当然「Aランク」のはずじゃないですか。すると手紙には「仕寄申し付け候」の記述があるんです。やはり「仕寄戦法」を選択していますよね?

○こうして「手紙史料」が存在していますし、記述内容も「現実状況」と確かに一致するのですが、今でも「関ヶ原合戦」は、通説で語ってきた話のままなんです。伏見城は「十日も攻め続けて、やっと攻め落とした」だし、田辺城は「一ヵ月以上も攻め続けたあげく、ついに落とせなかった」です。史料があろうと記述があろうと、なんにもならないのであれば、こと「合戦」に関して言う限り、歴史学者の言うことなんか、少しもアテになりません。だいいち彼らは「根本的な問題」に気づいてないんです。敵城が「どんな状況」だろうと、適切な「戦法」を選択しさえすれば、城は「落とせる」という点です。どうしたって「落ちてしまう」んであれば、どうして「わざわざ籠城して、抵抗する」んでしょうかね?

○通説では、そうなりませんね?「落ちたケース」と「落ちなかったケース」があるんですから、落ちないことを前提に「籠城して戦うのが当然だ。落ちたのは結果にすぎない」となるのでしょう。だから「考えたこともない」のでは?
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