『南極料理人』と『キツツキと雨』が個人的にツボに入った沖田修一監督の新作、『子供はわかってあげない』を見て来ました。同名漫画を映画化したものです。
力の抜けた青春コメディの佳作です。
【物語】
女子高生で水泳部員の朔田美波(上白石萌歌)は、共通のアニメが好きなことで知り合った書道部員の門司くん(細田佳央太)と親しくなる。美波は幼い頃に実の父と別れており、ふとしたきっかけで、門司くんの兄で元探偵の明大(千葉雄大)の協力を得て、父を探すことになる。
しかし美波の父・友充(豊川悦司)は、信仰宗教の教祖であった。
…ハードな展開にもなりそうな物語ですが、『南極料理人』『キツツキと雨』のテイストのままの映画なので、ゆったりのんびりと話が進みます。長回しも多用し、2時間20分弱の上映時間が3時間ぐらいに感じられるほどです。
しかしそれは苦痛な時間ではなく、心地よいので、苦になるどころか快適に見ていられます。
ヒロインの美波=上白石萌歌は、個性的な顔立ちで、ボーイ・ミーツ・ガール型の青春劇にありがちな美少女タイプとは程遠いのが特徴。原作の絵が別に美少女ではないので問題ないですが、だんだん可愛く見えてくるから不思議です。
宗教の教祖(正確には元教祖)をしていた父=豊川悦司も、肩の力が抜けた自然体の演技で、これは新境地かもしれません。とつぜん訪問してきた娘と再会し、とまどう父を好演しています。
劇中劇として登場するオリジナルアニメにかなり力が入れられており、そこだけ浮いている感じもしましたが、大きな事件が起きることもなく日常に戻っていくという物語は、このご時世だからこそ逆にファンタスティックに見えます。
★★★★。
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