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2020年03月16日01:21

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戦前の小津映画 2本立て

小津安二郎の本(KAWADEムック)を買って読んだので、先日入手したフランス盤BD-BOXから、同監督の戦前の映画2本をホームシアターでかけて見ました。
いずれも未見の映画でした。

●『東京の合唱』(1931(昭和6)年松竹蒲田)サイレント

会社の不条理な人事に反発したことでクビになった岡島(岡田時彦)。
折からの大不況で再就職もままならぬ中、3人の子どもと妻を抱えて途方に暮れる岡島は、かつての恩師(斎藤達雄)が経営する洋食屋「カロリー軒」で働くことになるが…。

世界恐慌から2年後、日本でも着実に不況が深刻化していた時代に作られた映画です。
主人公の学生時代のコミカルなエピソードや、社長とのケンカなど、喜劇的なシーンが多い一方で、小さな娘(なんと高峰秀子!)の病気や貧困など、シリアスな展開も際立っています。

そんな中、「一皿満腹主義」を掲げる洋食屋・カロリー軒を営む恩師が登場すると、物語に柔らかさが生まれます。15銭のライスカレーが名物の洋食屋で(大ざっぱな大盛りなのが可笑しい)、元教師の斎藤達雄が営んでおり、このカロリー軒は後の小津映画にも登場することになります。★★★。


●『東京の宿』(1935(昭和10)年松竹蒲田)サウンド版

大不況の煽りで職がない父・喜八(坂本武)と、2人の小さな息子。貧困の中、かつての知り合いが経営する食堂に身を寄せることになった3人だったが…。

『東京の合唱』から4年経っていますが、社会問題化した貧困は悪化の一途を辿り、職探しの人びとが安宿で寝泊まりする日々を追った、「喜八もの」の1作です。

小津監督特有のローアングルの原型がすでにありました。
工業地帯の原っぱで過ごす一家を、同じ目線の高さで撮っており、その苦しさや哀しさがストレートに伝わってきます。力のある映画は、85年経ってもやはり輝きを失わない証拠です。

悲しく寂しい結末を迎えるところに時代を感じます。★★★。

…小津安二郎の1920〜30年代の作品群は、フイルムが散逸し、現存するものは貴重です。フランスで安価なBD-BOXが出たのは嬉しい限りですが、本家の日本で高価なのは本末転倒です。
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