北野武の最新作『アウトレイジ 最終章』を見て来ました。
初老で孤高のヤクザ・大友の闘いを描いた3部作の完結編となります。
【物語】
前作のラスト、マル暴の刑事・片岡を射殺した大友(ビートたけし)は、韓国に逃亡し、韓国政財界の大物・張(金田時男)の援助を得て暮らしていた。弟分の市川(大森南朋)は、大友を慕っていた。
ところが、関西・花菱会の幹部、花田(ピエール瀧)が、大友のクラブの女の子を傷つけたことから、張グループと花菱会との仲が悪化。花菱会若頭の西野(西田敏行)は、これを利用して会長の野村(大杉漣)を会長の座から引きずり降ろそうと画策する。
…過去2作と同様、俳優を見るための映画と言って間違いないでしょう。
前2作で最も悪かった刑事・片岡(=小日向文世)が死んでいるため、老練な関西ヤクザの西野=西田敏行が本作最大の悪役として登場。大友を「古臭い、時代遅れの極道」と言い捨てて利用し、会長の座に上り詰めていきます。となりのスクリーンで上映中の『ナミヤ雑貨店の奇蹟』での天使のような雑貨店主とは正反対の凶暴な役です。
裏をかいたつもりが次第に罠に落ちていく、元証券マンのインテリ会長=野村に大杉漣。久々の北野映画出演ですが、今回は気の毒な役どころに徹しています。
時代からも世代からもどんどん取り残されていく大友=ビートたけしと、新たな舎弟となった市川=大森南朋の、親子のような絆も泣けます。
しかし、中でも特筆すべきは金田時男扮する韓国のフィクサー=張と、光石研の中間管理職ヤクザ・五味。前者はほとんどセリフがなく、凄みを見せる場面が1シーンだけあり、印象的です。
五味は前作にも登場していますが、今回の最後の最後で本性を見せる。不気味な笑顔が強烈でした。
思えば、40年前の大傑作『仁義なき戦い』ですでに、菅原文太が、時代からずれ始めた昔気質のヤクザを演じていた訳で、この3部作も基本的構造はそれと変わらなかったということ。往年のヤクザ映画への郷愁のようなものを感じる、静けさをたたえた完結編でした。
★★★。
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