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2016年11月21日00:42

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新旧「獄門島」比較

長谷川博己が名探偵・金田一耕助を演じる長編ドラマ「獄門島」が、NHKのBSプレミアムで放送されました。

「獄門島」といえば、横溝正史の金田一耕助シリーズでは「犬神家の一族」「八つ墓村」「悪魔が来たりて笛を吹く」「悪魔の手毬唄」などと並んでの人気作。何度も映像化されていますが、中でも有名なのは市川崑=東宝=石坂浩二主演の映画版『獄門島』(1977)です。


良い機会なので、両方の「獄門島」を比較してみました(ネタバレはしませんが、ややご注意を)。
細かな点を挙げてもキリがないので、以下の3点で比べてみます。


●金田一耕助

基本的なスタイルは共通でも、演者によって大きく変わるお馴染みの主人公。
石坂浩二の金田一耕助が、人当たりの良い、愛されるキャラクターだったのに対し、長谷川博己の金田一耕助は、戦争の後遺症に悩む、かなりエキセントリックで神経質な人物として描かれています(閉所恐怖症であることも表現されています)。東宝版『八つ墓村』の豊川悦司の金田一耕助に似ている部分があります。

最も大きく異なるのは事件解決後。
石坂=金田一は真犯人特定後いつも暗い気持ちに包まれ、人間の暗部の深さに恐れおののきますが、長谷川=金田一は、事件を自分の挑戦ととらえ、真犯人特定のシーンでは過剰なほどの自信に満ちています(その後、虚無感に包まれているようではあります)。


●獄門島

市川崑監督による映画版では、映画の冒頭で獄門島の住民は罪人や海賊の子孫であると明言されており、その割には明るい坂口良子・三木のり平が住んでいる楽しげな島として描かれている獄門島。今回のドラマ版では、金田一が島民に話しかけてもひたすら無視され、本鬼頭・分鬼頭の住民にもぞんざいに扱われる始末。かなり排他的で陰湿な島として描かれているのが特徴です。


●了然和尚

事件のキーである、”殺害がある故人の遺志によって行われた”という宿命的な部分が、東宝映画版では強調されています。了然和尚を演じた佐分利信によって、その悲劇性はさらに効果的に演出されていました。ドラマ版の奥田瑛二演じる了然和尚は、最後までその本性を見せません。しかしクライマックスで見せる演技は見事です。


…全体を通して見て、今回のドラマ版は、原作に忠実に描きつつも新たな金田一耕助を世に出そうとしているようでした。尺はちょうど120分で、東宝映画版(141分)と比べると短く、短縮された感もありますが、島の空気感などは非常に良く演出されています(この監督、間もなく公開の映画『疾風ロンド』も手掛けているようです)。


★★★。映画版には及びませんが、良作です。


ラスト、長谷川博己の金田一耕助は、東京からある電報を受け取ります。次回作への伏線でもあるようで、期待しても良さそうです。
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