離れていた父親ととつぜん暮らすことになったカップルを描いたドラマ『お父さんと伊藤さん』を見て来ました。
この映画とは似て非なるプロットではありますが、父と娘を描くホームドラマと言えば名手なのが小津安二郎。もちろん別物であり、小津監督の時代から50年近く経った今でも、共通点はあるのだということに気付かされます。
【物語】
30代も半ばに差し掛かった彩(上野樹里)は、20近く年上の伊藤さん(リリー・フランキー)とバイト先で知り合い、同居していた。
そこへ突然、疎遠になっていたお父さん(藤竜也)がやってくる。兄の家族と暮らしていたお父さんだったが、孫の中学受験に邪魔になるという理由で、追い出されるような形で彩の家にやってきたのだった。
娘とその年上の彼氏、娘の父親の3人の同居という、奇妙な生活が始まる。
…この映画、大きく笑えるようなシーンや泣けるようなシーンがなく、淡々と物語が進むのが大変良いです。最近の日本映画は、見ていて気恥ずかしくなるような「笑える」「泣ける」が多く、しかも下手なのが大いなる欠点ですが、そういうのがありません。
困惑するアラサー娘の上野樹里、達観したような50代の彼氏役のリリー・フランキー、頑固一徹な父親・藤竜也。この3人のアンサンブルがとても良い。
温泉にもボーリングにも喜ばない父をもてなすため、リリー・フランキーが連れていくのがホームセンターというのも良かった。男なら大いに共感できるはず。
ラストは少々唐突すぎるような気もしましたが、中途半端に夢を語らず、現実的なのも悪くありませんでした。それでいて温かみの感じられるラストでした。
★★★。
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