太平洋戦争末期、陸軍省の全面協力で製作された戦争映画『あの旗を撃て』をDVDで購入して見ました。
この映画、戦時中の米軍捕虜が強制的に撮影に参加させられており、戦争犯罪を恐れた終戦時にネガが焼却されたはずでした。
しかしどういう訳かアメリカの国立公文書館と議会図書館に保存されており、京橋のフィルムセンターが公文書館版(上映時間108分)を購入した、とされています。
(このあたりは高槻真樹・著「映画探偵」にも記載あり)
国立公文書館版(108分版)と議会図書館版(78分版)は上映時間が異なることから、何らかのカットがされた上でアメリカに渡ったと考えられます。
日本国内で大昔に出ていたVHSは108分だったようなので、国立公文書館所蔵のバージョンと思われますが、なんと今回ディアゴスティーニから出たDVDは、上映時間62分との記載。
もしや新たに発掘されたプリントか!?と思って緊張しながら見ることに。
1944(昭和19)年、日本=フィリピン合作、東宝映画=陸軍省作品。
【物語】
昭和16(1941)年12月、帝国陸軍はついにフィリピン・マニラに進撃。米軍は慌ただしく撤退を開始した。その際、米軍のトラックがひとりのフィリピン人の少年を轢いたため、少年は歩けない体になってしまう。
マニラ占領軍の池島兵長(大川平八郎)は、少年の姿に、故郷に残してきた自身の弟の姿を重ね合わせ、日本人医師による手術を勧める。
…登場する米兵はみんな無表情かふて腐れた顔で(そりゃそうだ)極悪非道、対する日本兵はみんな英語がペラペラな上に紳士的という、分かりやすいプロパガンダ映画です。
戦闘シーンや爆撃シーンを円谷英二が手掛けており、戦時下に製作された映画だというのにクォリティの高さには驚かされます。
それにしても謎は深まります。
映画の冒頭、タイトルと東宝マークが出た後のクレジットが欠落しているらしく、スタッフロールの字幕はビデオ合成されたものでした。VHS版、フィルムセンター所蔵のマスターとは異なる可能性もあります。
DVDに収録の上映時間も108分で、これはアメリカ国公立公文書館所蔵のマスターとは一致しております。
謎は深まるばかりです。★★★
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