劇場で観たときの感想です。
『アイリッシュマン』
スコセッシの最高傑作、というまではなかったけれど、おもしろかった。グッドフェローズとカジノの同系列なのかとなるも冒頭はそれほどまでなく、カイテルも出てきて、ペシもいての、同窓会かこれ、ヤキがまわったなスコセッシ、という感じ、でもって体重増やしたあの頃と違ってデニーロ、メイクで若くなっても動きは壮年だな、となるも、観てると慣れてきてそれも気にならなくなり、これまでの甲高い声で捲し立てていたペシが今回はとても落ち着いたボスで、ラッセルとは何者?という関心に気が回っていき、それに元兵隊であるがゆえに命令には疑いもなく従うアイリッシュマン(御大であるがゆえ貫禄ある役しかこないデニーロにすれば願ってもない、シンプルに見えながらも複雑なキャラ)にも目がいき、作品にのめり込んでいく。スコセッシのいつものように忠誠と裏切りが表され、カザン的にその社会で苦悩しながらもそこに准じ、パウエル/プレスバーガー的にその世界で己の欲望に殉じる主人公、そして、ふたつの映画的世界で輝き苦悩するピュリティのアンナパキン、スコセッシのパターン表される。あまり表象的にみたらいけないけれど、今回のキリストとユダは誰かとなるも、ペシも含めた3人で、どれもがその両方にあたり、決してパチーノがキリストでデニーロがユダではない。むしろ、デニーロにキリスト的苦悩が表され、パチーノのその固執、強欲、様々なモーション表され、贖罪の苦悩が主人公のなかで増殖する感覚が強い。でも、これがおもしろかったのはそうしたいつものパターンなのではなく、やはりアクトに目がいくのであった。湖のとこで電話するパチーノと彼を説得するデニーロのアクトをはじめふたりのセンスが作品をひっぱる。ヒートより白熱した。エンドクレディット、これも同窓会か、ロビーロバートソンの音楽、でも出だしはラストワルツを、そして中身はハスラー2のカッコよさを蘇らせてくれる感覚でよかった。グッドフェローズとカジノほど常に既成の曲がジャンジャカ鳴ってる感じでは今回はなかった。もっと落ち着いた感じ。グッドフェローズはどんどん不安とスリルが高揚するセンスで、カジノはきらびやかな王国の衰退のなかネガティヴにしてパッシオネイトなエモーションが増大していくセンスであったけれど、今作は落ち着いた雰囲気のなかで慈愛を模索する、そんな感覚がある。グッドフェローズとカジノはラスト、その裏切りと忠誠の社会でどっこい生きている、という感覚だったけれど、ドアを閉めないでくれ、というなか明かりに在るデニーロ、これは救済が表されているかのようで、静けさがある。でもやはり、同様にここにもサヴァイヴァー的なとこも表されているのかな。そして贖罪は、ワンパターンのようにスコセッシにある。これでオスカーは無理のような気がするけど(なぜなら新しいタイプが出てきてるのに、これだと過去に引き戻されるハリウッドのように思えるから)、グッドフェローズとカジノに比して演出に円熟味を感じる。
エンドクレディットでスコセッシとデニーロが2人仲良く横並びに製作として表記されていたけど、デニーロの監督第二作グッドシェパードとこの作品似ている感覚もあるけど、デニーロも製作側としてアイデア出したのではないかな、というより、彼も演出に貢献したのではないかな、とみる。
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