2024年2月20日(火)
『エル・スール』(2024年)
監督:ビクトル・エリセ
伏見・ミリオン座
追憶のなかの父はとても優しく、どこか秘密めいて、そしてとても淋しそうだった・・・・
フランコ独裁政権下時代のスペインが舞台。
映画のヒロインといえる少女の父親は、反フランコで、親フランコの祖父とは反りが合わずスペインの“南”から、夏でも暑くならない“北”へと流れ着いてきたみたい。
父親はきっとスペイン内戦時代に、ともに戦った女性への思いを持ち続けているようだ。
すべてが、そうではなかろうかと、そこはかとなく伝わってくる。
この、「そこはかとなく伝わってくる」というところが良い。
娘の子ども時代と少女時代を演じたふたりの小さな女優さんがとてもキュート。
教会での初めての聖体拝領のため、白い礼装で身支度した娘さんがひげ面の父親とダンスを踊るシーンは名場面だった。
少女は父親が背負った哀しみを知るために、エル・スール=南へと旅立つ。
父親世代から次の世代へのエールであり、自分たちの轍を踏まないで欲しいという祈りだろう。
先にあげたふたりの小さな女優さんを含め、俳優たちがすばらしい。
とりわけ父親役のオメロ・アントヌッティと、“南”からやってきたおしゃべりな乳母役の老女優・ラファエラ・アパリシオが印象に残る。
もちろん撮影もすばらしい。
はじめて見たが傑作だ。
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