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2024年05月25日21:29

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本●「くじ」

本●「くじ」 (ハヤカワ文庫)
シャーリイ・ジャクスン・著

ネットで新作映画の予告編を見てたら、作家のシャーリイ・ジャクスンを主人公にした『Shirley シャーリイ』(7月公開)というのが出てきた。
エリザベス・モスの底意地の悪そうな顔に釘付け。
これは見なくちゃとなったのだが、そういえば彼女の本を読んだことがない。
とにかく、シャーリイ・ジャクスンといえば「くじ」、というのが対句になってるくらいだから、まずはこれ。

表題作を含む22の短編集。
はじめの3作を読んだ時点で、なにが面白いのかさっぱり分からなかった。
ところが4作目の若い女性と盗癖のある老婦人の駆け引きを描いた「決闘裁判」から、うん、ひょっとしたら面白いかもとなり、調子が出てきた。
列車の個室にいた母親と息子と幼い妹のもとに赤ら顔の老紳士が同席し、少年に自分が小さかった頃の昔話を語りだす。その昔話というのが目の前にいる女の子と同じぐらいの年頃だった自分の妹を絞め殺したうえ首と手足をバラバラにして、そのうえ薪で滅多打ちにして・・・・というひどい話の「魔女」や、虚言癖の少年に両親が騙されまくるという奇っ怪な1編「チャールズ」など、だんだんと狂っていく。
そして掉尾を飾るのが「くじ」だった。
とある村で老若男女の村人全員が集まっての、年に一度のくじ引き大会が始まった・・・・
途中まで読んで結末が分かってしまった、というか昔読んでいた。
少ないページ数なので、きっと立ち読みで済ませたのだろう。
こちらもひどい話だが、どことなく、いまのSNSの炎上騒ぎを予言しているみたいで含蓄がある・・・・ような気がする。
正直、22編のうち半分ぐらいはよく分からないが、はまったときはメチャ面白くて、クセになりそう。
短編集の全体を通して、ふつうに暮らしている人たちのちょっとした悪意や欺瞞や狂気みたいなものが底に流れている。
ということで、昨日見た『関心領域』と通じるものを感じた。



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