mixiユーザー(id:6810959)

2023年09月14日21:46

31 view

本●「おいしいアンソロジー ビール」

本●「おいしいアンソロジー ビール」(だいわ文庫)
阿川佐和子 他:著

読了。

ビールにまつわる小エッセイ44編。
北大路魯山人から村上春樹、珍しいところでは責め絵の伊藤晴雨の名前もある。
肩の凝らないものばかりだが、瓶ビールの注ぎ方がどうしたとかドイツで飲むビールはやはり美味い、といったうんちく話に出くわすと、どうしても鼻白む。
そんななかで、東海林さだおの一編「生ビールへの道」が頭ひとつ抜きん出ていた。
東海林さだおが真夏の午後、急遽駆り出された町内会の草野球につき合い、喉がカラカラの状態でようやく打ち上げタイム、つまりはビールタイムに入ろうとしてるのに、どういうわけか電車に揺られて渋谷へ行くはめに。
打ち上げ会場が渋谷の焼き鳥屋だった。
ようやく焼き鳥屋に到着したものの、そこから飲み物は何にする、つまみは何にするで、話がまとまらず、いつまで経ってもビールが飲めないというドタバタに爆笑だった。
ビールのうんちく話なんかをいくら読んでも、ビールを飲みたくなることはない。
しかし、東海林さだおの一編のように、とにかく冷たいビールにありつき、グビグビ、プハーッがしたいという、飲んべえのいじましさに出会うと、無性にビールが飲みたくなる。
飲んべえのいじましさという点では、夢野久作の「ビール会社征伐」にも大笑いだった。
強い印象を残したのが、NHKの名ディレクター・吉田直哉の「ネパールのビール」だった。
吉田直哉が撮影のためにヒマラヤの麓にあるネパールの村に滞在したときの出来事。
撮影クルーと懇意になった少年に、お金を渡しビールの調達を依頼したのだが、夜遅くなっても帰ってこなかった。そして、次の日になっても少年は戻らなかった。
車も通らないような高地で、ビールを買うには険路をたどるしかない。
もしや事故ではなかろうかと危惧する吉田に、村人たちは、大金を手にした少年が、そのまま都会へでも逃げたのだろうと言うだけだった。
吉田はビールが飲みたいばっかりに、ネパールの少年にとっては信じられないほどの大金を渡してしまったことを後悔する。
水の泡となったビールと消えてしまった少年、その結末とは・・・・

まさかビールの話で泣くなんて!!



6 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2023年09月>
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930

最近の日記