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2020年03月23日01:33

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映画日記『オリ・マキの人生で最も幸せな日』

2020年3月22日(日)

『オリ・マキの人生で最も幸せな日』(2020年)
監督:ユホ・クオスマネン
今池・名古屋シネマスコーレ

1962年、ときのプロボクシング世界フェザー級チャンピオンのデビー・ムーアを相手に、フィンランド人として初めて世界戦に挑んだプロボクサー、オリ・マキの物語。
昔、デビー・ムーアの試合の録画をテレビで見たことがあった。
その当時、野球と並ぶ人気スポーツだったプロボクシングの試合を、民放各社が競ってテレビ中継をしていた。
そして試合がKOで早く終わってしまうと、番組枠の埋め合わせのため、内外の古い試合の録画を流していたのだ。
そのひとつに、デビー・ムーアの試合があった。
あのデビー・ムーアかあ。
懐かしさもあって、映画館へ行くことにした。

家業はパン屋ながら、欧州では敵なしのオリ・マキは、トレーナー兼プロモーターのエリスの下で、直前に迫った世界戦に向けて練習と減量に励んでいた。
しかし、チャンピオンを米国から招聘するための資金集めに、金持ちのパトロンへの挨拶まわりやら、広告ポスターの撮影やら、記録映画の撮影やらで練習に集中できない。
じつは、オリ・マキには練習に集中できない事情がもうひとつあった。
それは、彼がボクシング以上に、ライヤという娘さんに夢中になってしまったのだ。
それでも試合は近づいてくる。
フィンランド初の世界戦ということで、国中の期待が集まるなか、万余の観客を集めた競技場で試合が始まる。
はたして、その結末とは・・・・

『ロッキー』のような熱いボクシング映画ではない。
スポーツ映画というより、一風変わった恋愛映画だ。
いや、恋愛映画でもあるが、深い人生観を味わう映画でもあった。
他人に顔向けできないような、ぶざまな大失敗をしても、長い人生の中ではささいなこと。
それよりも、長い人生を共に歩んでくれるささやかな愛を見つけなさい。
と、言ってるみたいだ。

エンドロールのクレジットを見て、そうなんだ!!とおもった。
それは、ラストでオリ・マキとライヤの脇を、仲の良い老夫婦が通り過ぎていくシーンがあるのだが、その老夫婦こそ、実際のオリ・マキ夫妻ということらしい。
ときたまではあるが、思わぬ発見があるので、エンドロールは最後まで見るにかぎる。

ところで話は冒頭に戻るが、私が見たデビー・ムーアの試合というのは、キューバのシュガー・ラモス選手との世界戦だった。
さっきネットで検索したら、オリ・マキ戦の翌年、1963年の試合だ。
この試合で、デビー・ムーアはシュガー・ラモスの強打を食らってダウンしてしまう。
その際、後方に倒れた彼はロープに後頭部を強く打ちつけてしまい、それが原因で数日後に亡くなってしまった。
デビー・ムーアの名前と、テレビでたった一度だけ見た彼の試合を今でも覚えているのは、その不幸な出来事のためだった。
『オリ・マキの人生で最も幸せな日』の終盤に、試合後の豪華なディナー・パーティのシーンが出てきた。
にぎやかなパーティ会場をオリ・マキとライヤは、場違いとばかりに早々に退散する。
そのパーティ会場には、もうひとり場違いを感じている男がいた。デビー・ムーアだ。
ひとりだけ、会話に参加することなく、孤独に沈んだようなデビー・ムーアの姿がちらりと映る。
もちろん、作り手がデビー・ムーアの悲劇をふまえて撮ったショットだろう。
一瞬ではあるが、まさに画竜点睛のようなワンショットだった。


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