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2019年10月07日00:07

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映画日記 『惡の華』

2019年10月6日(日)

『惡の華』(2019年)
監督:井口昇
矢場町・センチュリーシネマ

中学2年生にして、ボードレールの「惡の華」を愛読する春日くん(伊藤健太郎)が、あこがれのクラスメート・佐伯さん(秋田汐梨)の体操着を盗み、ブルマに顔をうずめてしまった。
その様子を、教師に「クソムシ!」と悪態をつくような問題女子で、クラスの嫌われ者の仲村さん(玉城ティナ)が目撃していた。
仲村さんは春日くんを脅し、変態呼ばわりして奴隷扱いをはじめる。
いっぽう、春日くんが自分の体操着を盗んだとは知らない佐伯さんは、ちょっとした出来事がきっかけで、彼に夢中になっていく。
しかし、春日くんのそばにはいつも仲村さんがいて・・・・

『宮本から君へ』といっしょに、ラジオで町山智浩が熱く語っていた。
よく聞いてなかったので、てっきり童貞少年のドタバタ青春コメディだろうとおもって見に行ったら、見事にうっちゃりをくった。
冒頭で“現在、思春期の真っ只中で、自意識ばかりで何もできない自分への焦燥感にさいなまれている少年少女と、かつての少年少女に、この映画を捧ぐ”みたいなメッセージが出てくる。
見終われば、その通りの映画だ。

キーワードは「変態」。
仲村さんは、あの山の向こうへ自分を連れて行ってくれる変態があらわれることを、ずっと待っていた。
そんな彼女の前に、変態候補の春日くんがあらわれた。
仲村さんの期待に応えようと、春日くんは立派な変態になろうともがくが、変態どころか自分はからっぽな人間でしかないことを知り、絶望する。
「惡の華」を読む資格なんか、ぼくにはないんだ。
山の向こうをめざす、変態の仲村さんと春日くんとは反対に、こちら側でまっとうに生きようとする佐伯さんだったが、かげでは無茶苦茶なふたりの変態ぶりを、どこかまぶしく見ていた。

「変態」が何を意味するのかは、これまで過ごしてきた人生、とりわけ思春期や青春期によって、映画を見る人それぞれに違うとおもう。
けっこう哲学的な映画なのだ。

思春期をこじらせてしまった3人の少年と少女にやってきた、夏祭りの夜がクライマックスだ。
祭りのやぐらに登った仲村さんと春日くん。
いったいどうなることかと、ハラハラしながら見た。
玉城ティナと伊藤健太郎が、まるでアジテーションのように同じセリフをいっしょに叫ぶ。
昔のアングラ芝居の一場面を見てるようで、ちょっぴり懐かしくて、好きなシーンだ。

そして、

春日くんがいなくても、わたしはひとりで生きていける!!

と、ひとりぼっちで海をみつめていた玉城ティナに、胸が疼いた。

傑作!!



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