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2022年12月11日22:24

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本●「夜の終わる時/熱い死角」

まだ冬の序の口なのに、今日は陰鬱な空模様、晴れたかとおもうと急に灰色の雲が空を覆い、曇るととたんに気分が落ち込んでしまう。
結局、どこにも外出せず終日ひきこもり。
おかげで、読みさしの本2冊を読了した。

本●「夜の終わる時/熱い死角」(ちくま文庫)
結城昌治・著

長編1編、短編4編からなる警察小説集。

若い刑事が恐喝事件の供述を取りに行ったまま音信が途絶えてしまった。
彼が所属する刑事部屋に重苦しい空気が漂う。
やがてホテルの一室で刑事の死体が発見された。
弔い合戦とばかりに、夜を徹して捜査に乗り出す刑事たち。
そして、刑事たちの幾日にも亘る眠れない夜が終わった。
その結末とは・・・・

表題の長編「夜は終わる時」は1964年の第17回日本推理作家協会賞受賞作。
事件の真相を追う刑事たちの地道な捜査ものが、途中から一転して犯人の視点で語られていくという2部構成が妙味だ。
表題作を含め全5編が、いずれも日本では珍しい悪徳警官もの。
悪徳といっても、どこかうら悲しい。
著者自身が言うように悪徳警官物というより「哀れな警官」物だ。
いずれも切れ味のいい結末だったが、とりわけ掉尾をかざる短編「裏切りの夜」が秀逸。
オチを言っちゃえば、刑事が殺人犯を見逃すという話。
主人公が警察官としての倫理を踏み外すという点では悪徳警官物だが、すこぶる読後感の良い仕上がりになっている。
ふつうに考えれば良識や公序良俗に反するが、小説ならゆるされる。
時代劇に翻訳すれば、十手持ちを主人公にした人情話になりそうだった。

結城昌治は面白い。
その昔、会社の先輩が「老後の楽しみ」と言って、箱入りの司馬遼太郎全集をせっせと買い込んでいた。
たしかに司馬遼太郎が老後の楽しみというのは、聞こえもいいので見習いたいところだが、どうも歴史小説というのが大仰で性に合わない。
県や市の図書館を検索すると、結城昌治の本がけっこうな数でヒットする。
ほとんどが未読。十分老後の楽しみになりそうだ。

このあともう1冊読み終えた。



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