映画日記『アルピニスト』

２０２２年７月２１日（木）

『アルピニスト』（２０２２年）
監督：ピーター・モーティマー ニック・ローゼン
伏見・ミリオン座

ひとりの先鋭的なアルピニストの半生を描くドキュメンタリー。
命綱などの道具を使わず、自分の手と指と足だけで垂直の岩場をよじ登っていくフリークライミングに密着した『フリーソロ』（２０１９）も凄かったが、『アルピニスト』の危険度にも圧倒された。
本作の若き主人公マーク・アンドレ・ルクレールはフリークライミングと卓越したアイスクライミング技術を使って、単独で冬期登攀、垂直にそびえる岩と雪と氷の世界に挑んでいく。
ちょっとのミスでストンと落ちてしまう。
落ちてしまうたって、２〜３メートルじゃなく、１，０００メートルはくだらない。
見てるだけで、下手なホラー映画よりよっぽど恐ろしい。
マークは何時間も、ときには一昼夜をかけて続く緊張の連続に押し潰されることなく、むしろ楽しんでいた。
彼の精神力と登攀技術はまさに超人だ。
と、ここで終わればよかったのだが・・・・

封切りから時間が経っているのでネタバレするが、たとえ超人であったとしても自然を克服することはできなかった。
苦さが残る結末だ。
それでも当のマーク・アンドレ・ルクレールは常人の何十倍、いや何百倍もの濃密な時間を駆け抜けていったとおもう。
私のような凡人が口をはさむことなど、何もない。