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2022年06月28日23:58

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映画日記『ゴースト・フリート 知られざるシーフード産業の闇』

2022年6月28日(月)

『ゴースト・フリート 知られざるシーフード産業の闇』(2022年)
監督:シャノン・サービス、ジェフリー・ウォルドロン
今池・名古屋シネマテーク

私が知らないだけで、世界はこんなことになっていたのか。
まず、現在のタイが世界でも有数の水産大国だったことなど、まったく知らなかった。
そのタイでは、人身売買や拉致同然で悪徳漁船に乗せられ、「海の奴隷」となった男たちが数万人も存在しているという。
その実態はまさに奴隷、賃金は払われず、ときには覚醒剤を使用しての長時間労働、不服を言えば暴力制裁、最悪は死が待っている。
いわば、現代の「蟹工船」だ。
そんな現実にパティマ・タンプチャヤクルというひとりのタイ女性が立ち上がる。
映画は、彼女が支援者たちといっしょに、タイから遠く離れたインドネシアで、遠洋漁業中の悪徳漁船から逃げ出して、その地に住みついてしまった男たちを捜し求め、救出する旅を描いていた。
異国に住みついてしまった男たちの中には、その地で妻子を持つ者もいる。
経緯や事情はまったく異なるが、リバイバル上映されている『ひまわり』を想起する。
戦争でなくても、強欲な経済によっても、祖国や家族から切り離された男たちがいた。
せっかく悪徳漁船から逃れたのだから、すぐに家族へ連絡すればいいものをと、私なんかはおもってしまうのだが、彼らのひとりがポツリと言った。
「恥ずかしい」。
何年もの間、音信が途絶えたままなのに、ただ働きで一銭の金も手もとに残らなかった。
悪徳業者につかまってしまい、人生を棒にふってしまった自分が、「恥ずかしい」。
じつは同じように、不条理な苦難が降りかかった被害者であるにもかかわらず、自分のことを「恥ずかしい」と言う人物を最近見た。
アニメドキュメンタリー『FLEE フリー』の主人公も「恥ずかしい」という言葉を発していた。ただし、「恥ずかしい」の意味合いは異なるのだが。
いずれにしても、海の奴隷となった男たちも、アフガニスタンからの難民も、数ではなくそれぞれが胸に葛藤を秘めた一人の人間だった。

ちなみに、本作のHPによると、
“タイの水産物輸入で世界第二位の日本は、タイからツナ缶、エビ、そして養殖用の魚粉などを輸入しているが、キャットフードに至っては約半分がタイ産”とのこと。
パティマ・タンプチャヤクル女史は2017年のノーベル平和賞にノミネートされたとあった。



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