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2021年05月26日23:10

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映画日記『将軍たちの夜』

ちぇっ、曇りで皆既月食が見られなかった。

2021年5月26日(水)

『将軍たちの夜』(1967年)
監督:アナトール・リトヴァク
ムービー・プラス【録画】

中学生から高校生時代にかけて、お金がなくて見たいとおもっていても見ることができなかった映画がいくつかある。本作もその1本。
中学生の頃、そのタイトルを当時購読してた映画雑誌の「スクリーン」で知った。
紹介文や作品評などで、とても退廃的な匂いがして、中学生の分際では、見てはいけない映画のようにおもっていた。
54年を経て、ようやく見ることができた。

ときは1942年、ところはナチスドイツによる占領時代のワルシャワから物語がはじまる。
ある夜、ワルシャワのアパートの一室で、残虐な殺され方をした娼婦の死体が見つかった。
遺体の下腹部には執拗な刺し傷が残されていた。
当夜、アパートの住人のひとりが、娼婦の部屋から階段を降りてくる男を、ドアのすきまからちらりとのぞき見ていた。
ただし、彼が見たのは軍服のズボンと、ズボンに縦に入った赤いラインだけだった。
赤いラインの入った軍服のズボン、それはドイツ軍の高級将官を意味する。
その証言に誰もが尻込みをするなか、ドイツ軍情報部のグラウ少佐(オマー・シャリフ)が捜査を始める。
すると事件当夜にアリバイのない3人の将軍が浮かび上がる。
占領軍司令官ガプラー将軍(チャールズ・グレイ)、参謀長カーレンベルク将軍(ドナルド・プレザンス)、赴任してきたばかりでヒトラーからの信任が厚いタンツ将軍(ピーター・オトゥール)だ。
さっそくグラウ少佐が将軍たちに探りを入れると、どういうわけか突如として彼はパリへ飛ばされてしまった。
月日が流れ、1944年のパリ。
連合軍が迫るなか、パリのドイツ軍中枢には、ふたたび3人の将軍たちがいた。
そして、またもや娼婦殺しが起こってしまう。
いまは中佐となったグラウとパリ警察のモラン警部(フィリップ・ノワレ)が捜査にあたることになるのだが・・・・

2時間半ほどの長尺ながら、まったくダレることなくグイグイと引っぱっていく。
誰が娼婦殺しの犯人かは、映画が始まる前からなんとなく分っている。
冷酷顔のドナルド・プレザンスが登場しても、ミス・リードにもならなかった。
ということで、ピーター・オトゥールのサイコぶりが圧巻!!
もし、封切り時の中学生時代に本作のピーター・オトゥールを見てたら、確実にトラウマになっていたはず。
殺人事件の謎解きより、第一にピーター・オトゥールのねちっとした変態ぶりを味わう映画だ。
第二に、娼婦殺しと一緒にすすむ、もうひとつの事件の顛末。
第三に、ふたつの事件に翻弄されながらも、誠実に愛をつらぬく恋人たちの物語がサイドストーリーになっていた。
巧みなストーリー展開に乗せられて、ドイツ軍が英語を喋っていてもまったく違和感がない。
ワルシャワ市街地の巨大なオープンセットがすばらしい。
ピーター・オトゥールの命令一下、建物に潜んだレジスタンスをあぶり出すために、火炎放射器を使って焼き尽くす。
燃え上がる炎を背に、陶然としているピーター・オトゥールがほんとうに薄気味悪い。

ところで、本作のことをネットで検索してたら、将軍を演じたチャールズ・グレイとドナルド・プレザンスはともに『007』シリーズでボンドの宿敵、ブロフェルドを演じていたという。へえーだった。
小心な若者を演じたトム・コートネイも忘れがたい。

54年も待った甲斐がある。
傑作。


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