演者の巧みさが際立つ 『影裏』

綾野剛と松田龍平が共演した映画『影裏』を見て来ました。

東日本大震災前後の盛岡を舞台にした、鋭い人間ドラマの秀作です。


【物語】
関東の製薬会社で働き、盛岡の支社に出向してきた今野（綾野剛）。
知り合いも友人もおらず、淡々とした日常を送る今野だったが、同じ職場で同い年の日浅（松田龍平）と意気投合し、彼の生き方に共感を覚えるようになる。
しかし、日浅はとつぜん職場を止めてしまう。やがて大震災がやって来る。


…監督は大友啓史。派手な映画を撮る人と思っておりましたが、本作は静かに情熱的な映画でした。

綾野剛がブリーフ一丁で目覚める冒頭から、ずいぶん裸になるシーンが多く、官能的に撮っていると思ったら、この主人公には意外な性癖があることが明らかになります。その一連の流れは自然で良かった。

内向的で物静かな綾野剛と、社交的でアウトドア好きな松田龍平の対比から、物語は切ない方向へと展開していきます。男ふたりが30を過ぎて友人どうしになることは、実際には珍しいことかもしれません。案の定、一筋縄ではいかない結末が待ち受けています。

綾野剛と松田龍平に加え、脇を支える國村準と安田顕がまた、いい。
特に後者のふたりは、決して声を荒げることなく、非常に落ち着いた演技で観客をくぎ付けにします。見事でした。

★★★。